「本当に豊かな教育」は民間学童にあり? 佐藤嘉高さんに教育論をぶつけてみよう

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越境入学が解禁されるとどうなる?

――いずれは学校を作りたいそうですね。

偏差値ではなくコンセプトで学校を自由に選ぶような社会にすべきだと思っています。公立校では越境入学が禁止されている現状が、モンスターペアレンツや不登校、いじめの原因になっています。

越境入学を解禁すると、一部の学校が掃きだめになってしまう? いや、本当にダメな学校は淘汰されていくでしょう。先生たちが「うちはこういう学校を作りたい!」という意識を持つシステムが必要なのです。たとえば「非行少年を更生させる」特色を持つ学校が人気を集めるかもしれません。「スポーツ教育の専門校です」「社会人になってから通用する力が身に付きます」など、コンセプトのある学校を選べるようになれば、さまざまな問題は解消されていくと思います。

名古屋市名東区にある「ファミリーズ」。3階には簡易フットサルもできる体育室がある。

公立の小学校を自由に選べるシステム作りに関しては、僕は共感できなかった。6歳にも達していない子どもがそんな選択能力を持てるとは思えないし、親が適切な判断ができるとも限らない。自分の子どもをどこに入れようか迷った挙句、いずれ「淘汰される」学校を選んでしまうかもしれない。

歩いて通えるいちばん近所の小中学校で、佐藤さんのようにやる気と父性に満ちた先生に、偶然、出会える社会のほうがいいと僕は思う。むしろ、コンセプトや目標など決めずに学校内の多様性を確保し、「情熱的な先生」「変わった先生」が潰されずに済むような体制がいい。いや、そんなことをしたら暴れん坊の生徒や無気力な教員がのさばって、学校が崩壊してしまうのだろうか。佐藤さんと話していると、教育や学校について珍しく真剣に考えている自分に気づいた。

大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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