電通と博報堂はいったい何をしているのか 超エリート集団の実態とは

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──人脈も単純でなく……。

どこかの雑誌がA社に取材したいと言ってきたとしよう。A社の広報から博報堂に問い合わせがくる。この出版社はブラックジャーナリズムかどうか。すると、契約しているその分野に詳しい人物に問い合わせる。その人物の氏素性はわからない。会社にいた頃、月に何回かその人物に連絡を取った。

広告代理店から内閣府に、広報担当として出向

中川 淳一郎(なかがわ じゅんいちろう)/ケロジャパン代表取締役。1973年生まれ。一橋大学卒業後、博報堂コーポレートコミュニケーション局で企業のPR業務を担当し、2001年に退社。CM・広告関連記事の雑誌ライターとして活動後、『TVブロス』編集部などを経る。著書に『ネットのバカ』『謝罪大国ニッポン』など(撮影:今井康一)

──選挙の手伝いもしますね。

選挙を手伝った広告代理店から内閣府に、広報担当として出向したりしている。自民党は電通、旧民主党は博報堂だった。ネット選挙が解禁になって、動くおカネがより大きくなった。政見放送、対談記事、一工夫した各種メディア向けの動画も代理店の仕事だ。特に解散・総選挙は緊急事態だから、いずれも特急料金でおいしい。衆議院選挙のほうが人数も多いだけ大きな額が動く。

──実際にも手掛けられた。

代理店経由でネット選挙の手伝いの指名がきた。わが党がどう見られているか、ネット上の論調を分析せよとのリポートから、候補者はツイッターで何を発信すればいいか、その反応への対策を考えよといった発注まできた。

──各種の企業広告となれば、「自家薬籠中の物」ですか。

謝罪会見も商機になる。そのリハーサルを1回100万円や200万円で請け負う。記者役を仕立て、想定シナリオも作る。そのVTRを提供して、発言内容や振り付けの指導をして、それもビジネスにしてしまう。振り返れば日本マクドナルドの社長は、1回目の会見とそれ以降では清楚に見せ深々とおじきをして、ずいぶん変わった印象だった。おそらく電通が助言をしたのだろう。

──企業からの収入は大きい。

在籍していた1996年当時、博報堂は日産自動車とマツダの「アカウント・エグゼクティブ」になり、それで扱い高は年1300億円近く一気に上乗せされた。この奪い合いは厳しい。負けたほうは左遷人事が発生し営業力の真価が問われる。

──営業の電通といわれます。

客に対して忠義を徹底的に尽くす。営業がいちばん偉いという考え方が強い。博報堂はクリエーターが偉そうにする。博報堂の給料は電通の7掛けだが、それでも世間的にはまずまずの水準にある。代理店に共通するのは、自社ないし自分だけでは何もできない「横流し体質」と、とかく大人数で打ち合わせに立ち会う点。クライアントには怒られないため、はやりを作るはずが、流行に踊らされがちになる。

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