「焼き肉」をめぐる次のブームはいったい何か 和牛の高騰や細分化はさらに進んでいく

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グラスフェッドビーフの事例として紹介した「肉塊UNO」(港区)は現時点で2カ月先まで予約の取れない予約困難店に変貌しました。リーズナブルな価格に対してのボリュームと濃厚な赤身肉、塊肉の魅力が認識され、グラスフェッドビーフ本来のポテンシャルが開花した証拠だと考えられます。

改めての解説ですが、穀物飼料で育てた「グレインフェッド」はサシが入って大きく育ち、青草や干草などの牧草飼料を与えた「グラスフェッド」は赤身が強く、あっさりとした味わいになります。 牧草だけを食べて育ったグラスフェッドビーフは肉が引き締まっていて味が濃厚で、しかも、現在も人気の塊肉、熟成肉にするには適した肉です。従い、赤身肉→塊肉→熟成肉のムーブメントとも連動性があり、先述した豪州産牛肉の輸入量、シェアに関しての優位性から今以上に流行すると考えられます。

和牛は芸術品とも言える牛肉だ

和牛は、徹底して飼料の給餌方法、配合方法をマネジメントされて育てられる、芸術品とも言える牛肉です。ただ、その和牛の子牛は現在、高値に張り付いてきています。日本人1人当たりの牛肉の消費量を減少できれば別ですが、極端に減らすことができなければ、価格が手頃で、輸入量も増加傾向のグラスフェッドビーフに需要と供給面からも頼らざるをえないでしょう。

つまり、和牛はさらに高騰し、食べさせる業界も細分化し、特定の肥育農家のつくる牛が高付加価値を生む、高価なご馳走になる時代になってきます。その供給を補填するという意味合いでも、グラスフェッドビーフが流行し、定着します。日本の牛肉食習慣が、和牛中心から、グローバルスタンダードに近寄る形にならざるをえないでしょう。

最後に先日発表されましたが、中国が豪州産牛肉の輸入制限を撤廃することになりました。中国でもこれまでのお金持ちだけでなく一般市民も牛肉をさらに食べるようになり、消費が向上した結果だと考えられます。従い、今後、中国の豪州産牛肉の強い買い付けが始まることも想定されます。高値に張り付く和牛の子牛だけでなく、グラスフェッドビーフでさえ、いずれ、高価な牛肉に変貌するかもしれません。

小関 尚紀 リーマン作家/MBA

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こせき なおき / Naoki Koseki

1970年、大阪府生まれ。サラリーマン作家。筑波大学大学院ビジネス科学研究科博士課程後期中退。早稲田大学大学院ビジネススクール修了(アジア太平洋研究科修士課程国際経営学専攻/東出浩教ゼミ)経営学修士。修士論文は『キャラクター選好プロセスモデルの探索的研究』 現在、都内企業に勤務しながら作家としての活動を行う。
 

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