事後レポ

熱を帯びる「SaaSベンチャー」急成長の舞台裏

日本でも起業が盛んになっている「SaaS(Software as a Service)ベンチャー」の成長戦略を考える「すごいベンチャーカンファレンス2017」が3月3日に東京・港区で開催された。さまざまな課題を乗り越えて事業を軌道に乗せてきた起業家らが登壇。その成長戦略について語った。
共催: セールスフォース・ドットコム 東洋経済新報社

オープニングスピーチ

セールスフォース・ドットコム
副社長
古森 茂幹

1999年にSaaSベンチャーとして創立、急成長を遂げてきたセールスフォース・ドットコムの古森茂幹氏は、同社の起業家支援ファンド「セールスフォース・ベンチャーズ」の活動などを通じ、最近は、伝統的企業を経験後にBtoBに参入する「大人ベンチャー」を中心に「起業の増加を実感している」と述べた。同社サービスは、初期投資を抑えた月額課金、追加コストなしで新技術に追随するバージョンアップ、短期導入が強み。AI(人工知能)もいち早く導入して「われわれのベンチャーとしての経験を生かし、企業を後押しする」と話した。

キーノート & 対談
熊谷流ベンチャーの流儀
真の起業家が実践していることとは?

GMOインターネット
代表取締役会長兼社長・グループ代表
熊谷 正寿

GMOインターネットの熊谷正寿氏は、現在のビジネス環境を、1 位の後に2位、3位の会社が続いた「レース型」から、勝ち残れるのは1社だけの「格闘型」になっていると分析。インターネットの普及で、消費者は同種サービスの料金や質を簡単に比較できるので、他社に劣後すればすぐ見捨てられるとして、スピード感を持ったサービスと社内の仕組みの差別化推進を訴えた。『東洋経済オンライン』の山田俊浩編集長から最近の起業ブームについて問われると、勝ち残れる会社は限られると指摘。アイデアだけでなく「迅速に提供サービスを改善するために自前のテクノロジーを持つことが大事」と述べた。

インタビュアー:
東洋経済オンライン
山田 俊浩 編集長

国内ネット系市場は、海外に対しては言語障壁があるが、国内からの新規参入は容易で、競争激化しやすいため、成長を続けて生き残るには、単一事業からコングロマリット化が必須とした。経営視点として、契約を取れば継続的収入があるストック型ビジネスは成長しやすいと強調。一回完結取引のフロー型の販売事業もレンタルにすればストック型になる例を示して工夫を促した。最後に「今後は都市のすべてがネットにつながり、ビジネスチャンスも増えます。SaaSストック型は、いったん優位に立って改良を続ければ、追いつかれる懸念も少なく、グローバル展開も可能です」とSaaSベンチャーの起業家を励ました。

スペシャルスピーチ
気鋭のSaaSベンチャー経営者が語る、
サービス誕生の瞬間、そして起業へ

ヤプリ
代表取締役
庵原 保文

プログラミング知識なしに機能を選択してスマートフォンアプリを制作できる「Yappli(ヤプリ)」を提供する株式会社ヤプリの庵原保文氏は、別の仕事をしながら、ネット企業勤務時代の仲間と3人で、モチベーション維持に苦心しながらYappliの開発を続けた2年間を回顧。完成・起業後も「このサービスができればすごい」という思いだけで開発したため、顧客がわからず、さらに2年間売れない日々が続いた。その後、小売業界の販促支援に活路を見つけ、地道な営業活動で軌道に。創業4年の今は、自社アプリ制作にYappliを導入する企業は約200社に達し「やっと成長フェーズに入りました」と述べた。

トレタ
代表取締役
中村 仁

飲食店向けの予約・顧客管理ツールを提供するトレタの中村仁氏は、飲食店経営時代にSNSによる集客で成功したが、その際に予約管理で苦労した経験から、店のお客のネット系エンジニアらと、紙の台帳、店主の記憶頼りの管理をITで効率化する課題に取り組んだ。そして、IT初心者向けに「銀行のATM並みに使いやすいツール」を開発。当初は、飲食店の現場について投資家の理解を得られず、資金調達に苦戦したが、導入店の業績改善実績を積み重ねて認知を得た。POSを導入している店はあるが、「メニューより重要な顧客情報の管理を良くすれば、もっと大きな変化が起きるはず」と語った。

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