取り沙汰されるあの「91年問題」

取り沙汰されるあの「91年問題」

塩田潮

 民主党の代表選が9月21日実施と決まった。もちろん小沢代表は出馬して3選を目指す。その小沢氏は14日、パーティーで「次の総選挙は世直しの最大で最後の機会」と演説した。「最大」はそのとおりだが、「最後」ではない、と前原誠司副代表など若手は前々から反発している。小沢氏が「最後」という言葉を使うのは、負けたら引退もという覚悟の表れと見る人が多いが、もしかすると、勝って政権を獲得しても、首相を引き受けないのでは、という憶測も民主党内に根強く存在する。

 そこで取り沙汰されるのが「小沢氏の91年問題」である。91年10月の海部首相の後継者選びの場面で、小沢氏は当時の自民党最大の実力者の金丸信氏に口説かれたが、「準備不足」を理由に断った。首相を、と要請されて辞退した数少ない事例の一つだ。表向きの理由以外の本心をめぐって、諸説がささやかれた。派の先輩や同僚の反発などへの配慮、3ヵ月前に心臓病発症で入院して健康問題を抱えていたという事情、首相よりも政治構造変革の担い手を目指したいという別の政治的野心、「神輿担ぎ」志向や「決定的瞬間に躊躇する」という逡巡癖などの性格上の理由等々だが、健康不安説が最有力と見られた。

 小沢氏は91年の首相辞退の際の要因を克服できているのかというのが「91年問題」である。無論、「準備不足」は考えられない。小沢氏は朝日新聞(6月22日付朝刊)の対談で「もし代表で総選挙に勝てば、いやでもやらなければならない」と述べているが、その言葉を額面どおりに受け取らない人も多い。「91年問題」はいまも民主党の将来を左右する隠れた重要テーマだが、今度こそ小沢氏にはスカッといってもらいたい。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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