「北朝鮮リスク」は、ズバリ「買い」の局面だ 「Xデー」に怯えるより今は投資するチャンス

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また金価格が急伸しているのも、有事を意識した動きである。世界最大の上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールド・シェアの保有高は11日時点で842トンと、3月末の832.32トンからわずかではあるが増加している。投資家の不安心理が資金を金に向かわせているのだろう。筆者は、金をつねに資産の10%保有するのがよいと考えているが、現状のような市場動向になったときに、このような資産配分が効果を発揮しそうだ。

また、原油についても引き続き強気で良いのではないか。NYのWTI原油は一時1バレル=47ドル台にまで下落したが、その背景は以前にも解説したように、投機筋の買い過ぎである。その買いポジションも、価格の下落に伴い調整が進んでおり、今回の相場反転時には再び買いポジションを積み上げやすい状況になっていたことも、上昇に拍車がかかりやすかったといえる。

原油価格については、今回のシリア情勢が価格の押し上げに寄与したことは間違いない。それまでは、米国内の石油掘削リグ稼働数の増加が産油量の増加を想起させ、上値を抑えられてきた。事実、リグ稼働数は12週連続で増加し、672基となり前年同期の354基から急増している。

しかし、実際に原油価格が50ドルを割り込んだ状態が続けば、多くの石油生産会社の採算が取れない。50ドル割れの状態が現実的には続きづらいことを理解していれば、50ドル以下を売り込むのは得策ではない。

一方、6月までの減産を実行中のOPEC(石油輸出国機構)は、かなり高い確率で7月以降も減産を継続するだろう。そうなれば、米国の産油量の増加を吸収する一方、世界経済が順調に拡大すれば、需要増が需給関係の改善につながり、これが原油価格を押し上げそうだ。このシナリオが実現すれば、現在高値を維持している金価格は、一定の調整を見るかもしれない。それでも、米国がドル安政策を講じていることや、利上げペースがゆっくりとしたものになるとのイエレンFRB(米連邦準備制度理事会)議長の発言を考慮すれば、金価格も高値圏を維持する可能性がある。

今は割安になった資産への投資を継続する時

繰り返しになるが、いま資産を無理に売る必要はない。もちろん「楽観的すぎる」との批判もありそうだ。しかし、それは市場を見るうえでのスパンや規模感の違いであろう。今は世界全体が短期志向に陥っており、マスコミでも不安心理をあおるコメントや解説記事が目立つ傾向がある。マスコミにとってはそのほうが、読者の耳目を集めるからだ。

北朝鮮が核攻撃をした際の結末や、シリア情勢の今後の行方などをまことしやかに解説する向きもあるが、予測は非常に難しい。本当にもし不安なら中途半端に資産を抱えず、すべて売り切って事態の経過を見ていればよい。もしそうする勇気も度胸もないのであれば、中途半端なことはしないほうがよい。現状では、割安になった資産への投資を継続するほうが、妙味があるというのが筆者の考えだ。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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