従来型の病院は30年後までに消えてなくなる 「負のオーラ」出まくりの病院をどう変えるか

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海外の病院は、日本よりもずっと「日常」に近い空間になっている。日本の病院も、まだまだ進化できるはずだ(写真:Zinkevych/Pixta)
日本は借金大国なのに、国や地方公共団体は約570兆円もの「公的不動産」を持つ。だが、欧米に比べ民間と組んだ公的不動産活用で大きく遅れる。どうすればいいのか。経営と街づくりの視点から鋭く切り込む木下斉(一般社団法人エリア・イノベーション・アライアンス代表理事)、「共通価値経営」を標榜する野尻佳孝(テイクアンドギヴ・ニーズ会長)、リノベーションなどで優れた実績を誇る馬場正尊(オープン・エー/東京R不動産)の3人が、ホスト兼パネリストとして毎回ゲストを迎え、「新しい日本の公共不動産のあり方」をビジネス視点で考えるのが「パブリック・アライアンス・トーク」だ。
第3回のゲストはタリーズコーヒージャパン創業者で前参議院議員の松田公太氏と、連続起業家でありMistletoe株式会社代表取締役社長 兼 CEOの孫泰蔵氏。3回に分けてお送りするが、まずは「病院」について。「あれもダメ」「これもダメ」の空間をどう変えるべきか。また「30年後の病院像」とは? 5人が熱く語る。

「スタバと同じ土俵で戦わない」。1つの答えが病院内出店

――松田公太さんは、タリーズのコーヒーショップを日本で展開されるとともに、東大病院内にオープンさせた経験をお持ちです。タリーズは日本の病院が大きく変わるきっかけとなったともいわれます。国会議員として公的空間についての国の考え方もよくご存じです。まずは民間企業が病院内にテナント進出する際の苦労などをお話しいただきたいと思います。

病院は、もっと「楽しい空間」へ。さらに未来は従来型の病院はなくなる?そのとき患者と向き合う施設とは? 5人が熱く語る(左から木下、野尻、松田、孫、馬場の各氏、写真提供:パブリックアライアンス事務局)

松田:タリーズは、シアトルにあるわずか4~5店舗の小さなチェーン店でした。私はその「スペシャルティコーヒーの文化」を日本に広めたいと思い、交渉の末に日本での営業権を得て、1997年銀座に1号店を出すことができました。

しかしその少し前、同じ銀座にスターバックスコーヒーの1号店ができていた。あちらには行列ができ、こちらは思うようにお客さんが来店してくれない。苦しい時期が続きました。

資金力もあったスターバックスは、大型店舗を一等地にどんどん出していく。われわれにはその戦略は取れないので、同じ土俵で戦うのはやめました。小さな店の展開に活路を見いだしたのです。特に力を入れたのがオフィスビルにカウンターだけの小さな店を出す戦略。初めは三井物産の本社(東京・大手町)に、わずか5坪の店を出しました。

三井物産の幹部の方からは、「すぐ撤退するだろう」と思われていたようです(笑)。当然です。というのも、同じビルの地下には大きな喫茶店があったし、各フロアには無料でコーヒーが飲めるベンディングマシンも設置されていた。わざわざ1杯400~500円も払ってテイクアウトのコーヒーを求める人など、いないだろうと思われていたのです。

次ページ4000人の物産ビルで、1日1000杯も売れたタリーズ
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