広島民の不満「チケット争奪戦が激しすぎ!」 カープ人気の高まりが招いた想定外の事態

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2時間半粘って500万円以上購入した人もいたと、前に述べたが、これは地元の旅行代理店のスタッフだった。全国のカープファン向けの、マツダスタジアム観戦ツアーのための"仕入れ"であり、転売目的ではなかったもようだ。

整理券の高値転売について球団は「われわれとしては把握していない」としつつ、「発売前日の配布にしているのは、高値転売の防止と、顧客の利便性を考えてのぎりぎりの選択だ」と説明する。

整理券を抽選制にすることも検討したが・・・

仮に整理券を発売数日前に配れば、それだけ転売の活動期間を与えてしまう。そうはいっても、整理券の順番がわからなければ、チケットを買おうとする顧客は予定を立てられない。整理券番号2000番の人が、発売時刻に球場に来ても、日がな1日待つことになるからだ。

整理券を抽選制にすることも球団は検討したが、そうしても当選確率を上げるため、抽選券を求めて並ぶ人の頭数が増えるだけなので見送った。

筆者の近著『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(上の書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

高値転売を目的としたチケットゲッターの跋扈(ばっこ)は他球団も頭を悩ませている問題だが、いたちごっこで撲滅は難しい。

「チケットサイトに座席番号が出ていれば出品者を特定できるので警告もしている。年間指定であれば全席に営業担当が付いているので、座席を特定できれば翌年は販売しないなどの措置をとっている。だが、チケットゲッターは特定されないよう出品時に座席番号を表示しないので、限界がある」(球団)

それでも、カープの地元ゲームのチケットをめぐる過熱感がここまで来ては、何もしないでいるわけにもいかない。来期は球団も何らかの対策を打つ考えだという。ただ、具体的にどうするかは「公表してしまうと、その対策を考えられてしまうので、ぎりぎりまで公表しない」という。

現在のようなカープ人気が続くかぎり、チケットゲッターと球団の攻防が繰り返されることは間違いない。

伊藤 歩 金融ジャーナリスト

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いとう・あゆみ / Ayumi Ito

1962年神奈川県生まれ。ノンバンク、外資系銀行、信用調査機関を経て独立。主要執筆分野は法律と会計だが、球団経営、興行の視点からプロ野球の記事も執筆。著書は『ドケチな広島、クレバーな日ハム、どこまでも特殊な巨人 球団経営がわかればプロ野球がわかる』(星海社新書)、『TOB阻止完全対策マニュアル』(ZAITEN Books)、『優良中古マンション 不都合な真実』(東洋経済新報社)『最新 弁護士業界大研究』(産学社)など。

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