事後レポ

震災から1年、私たちにできること

2016年4月14日と16日に、最大震度7の熊本地震が発生してから1年。3月27日に、東京・千代田区で「九州・熊本震災復興支援プロジェクト」が開かれた。有楽町駅前広場では、熊本県の物産販売などを行うフェアを開催。有楽町朝日ホールで開かれたフォーラムでは、地元自治体や企業の代表、識者、災害支援の専門家らが、創造的復興への道筋や、今後、首都圏や他地域でも想定される震災への備えについて語り合った。
主催:朝日新聞社
後援:熊本県、特定非営利活動法人全国災害ボランティア支援団体ネットワーク、東京熊本県人会、東洋経済新報社
協力:イオン、サントリーホールディングス、日本航空

【対談】創造的復興へ逆境の中にこそ夢がある

熊本県知事
蒲島郁夫
くまもと復旧・復興有識者会議座長代理
東京大学名誉教授
御厨貴

熊本県知事の蒲島郁夫氏は、熊本地震の教訓として、まず初動段階で人命救助のための出動要請を迅速に行なう必要性を指摘。避難所生活、仮設住宅生活の段階では、被災者の期待と現実とのギャップが大きくなる前に早めの対応を心がけてきたと説明した。復興は、単に元の姿に戻すだけではなく、将来の発展につながる「創造的復興」の視点を強調。官民が連携し、工業港をクルーズ船の母港として整備する八代港などを例に、九州全体の地方創生への貢献も目指す考えを示した。また、全国の人々や企業から「善意の爆発」とも呼ぶべき多くの支援、ボランティアの申し出があったことについて、「お申し出をいただいた皆さんに感謝するとともに、支援を受けるわれわれの受援力不足も感じました」と述べ、被災直後は、震災対応に熟練した災害ボランティアや、被災経験のある自治体の応援が重要な役割を果たしたと語った。さらに、県内外を問わず、「気軽に観光に訪れてもらう旅行ボランティアをお願いします」と呼びかけた。聞き手を務めた、東京大学名誉教授の御厨貴氏も、今回の震災経験を次の災害に活かすことが大事になるとして、「旅行で熊本を訪れ、見聞きしたことが、被災した時に役立つかもしれない」と語った。

【討論1】被災地で企業ができること

イオンリテール
特別顧問
梅本和典
サントリーホールディングス
執行役員
コーポレートコミュニケーション本部長
福本ともみ
日本航空
代表取締役副社長執行役員
藤田直志

イオンリテールの梅本和典氏は、小売業とは、人とのつながりが基盤の「人間」産業、地域に根ざす「地域」産業であるとの理念の下で、同社が多くの自治体などと防災協定、包括連携協定を結んでいて、熊本地震直後も、日本航空や自衛隊と連携して必要物資の輸送を実施したことを説明した。本業では、店頭のほか、移動販売車、仮設店舗も使って販売事業を早期に再開し、日常をいち早く取り戻すことに注力した。また、店舗は地域のライフラインと考えて、事業継続計画を整備。千葉本社以外に、愛知に防災センターを設け、災害時の本部機能分散も進めている。「いざという時の行政、提携企業とのソフト面の心のつながりを築くため、現場活動を地道に積み上げたい」と述べた。

サントリーホールディングスの福本ともみ氏は、熊本県に生産工場を持つ<地元企業>として復興支援に取り組むべく「サントリー水の国くまもと応援プロジェクト」に基づく支援活動について三点説明した。一点目は、被災された方々の心と体の支援を同グループの文化・芸術・スポーツ活動を通じて行うこと。二点目は、地元財団や大学とともに「サントリー熊本地下水みらいプロジェクト」を立ち上げ、同県の産業基盤であり県民の生活を支える地下水の持続可能性に貢献していくこと。三点目は、ビール類の売り上げの一部を熊本城復旧のために寄付するなどの事業を通じた支援であり「『ずっと、あなたと、熊本と』のメッセージのもと地域の皆様に寄り添った、息の長い支援をしてまいります」と話した。

日本航空の藤田直志氏は、企業理念と行動指針「JALフィロソフィ」をベースにした支援について語った。混乱する震災直後の対応は「人間として何が正しいかで判断する」と、現地との連絡を密に「現場主義に徹する」という二つのフィロソフィに基づいたと解説。災害時の協定を結ぶイオンとの連携では、イオンに担当社員を派遣することで情報確認、輸送物資の調整がスムーズになったと振り返った。また、被災地と本社の間には意識のズレが生じやすく、現地情報収集が重要と強調。被災者の声を聞く復興応援研修の際に「支援を受けるだけでなく、自ら何かをしたい」という声を聞いたという藤田氏は「被災者と同じ目線で支援に取り組むことが大事」と訴えた。

イースクエア共同創業者
リーダーシップアカデミーTACL代表
一般社団法人NELIS共同代表
ピーター D.ピーダーセン氏
東洋経済新報社
『CSR企業総覧』
岸本吉浩編集長

CSRコンサルタントのピーターD.ピーダーセン氏は近年、日本やアジアで相次ぐ大規模災害から「日本企業は多くを学び、対策を進化させている」と話した。企業は、法を守るだけでなく、社会との互恵関係を築く方向へ、大きな変革期にさしかかっていると指摘。災害後の混乱期には、企業が寄って立つ理念が重要になる、と強調した。司会の東洋経済新報社、岸本吉浩氏は「大きなネットワークを持つ企業が支援できることは多い」と今後に期待した。

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