「UR高級マンション」民間運営でどうなった? 宝の持ち腐れになっていた都内一等地物件

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こうした取り組みにより、一度は忘れられかけた物件がよみがえり、活用されるようになれば将来の国民負担も多少は減らせる。新しい物件に比べると足りない部分はあるものの、総体としては立地のよい、質の高い住宅が多いだけに、空き家にしておくのはもったいない。

リバーシティ21以外に民間が運営することになった物件も目黒や大崎、五反田、品川シーサイドなどの駅から徒歩数分以内と利便性は高く、タワーも多く含まれる。今後、民間が運営する予定の物件には晴海の「トリトンスクエア」、恵比寿ガーデンプレイスにある「恵比寿ビュータワー」、河田町のフジテレビ跡地の「コンフォガーデン」(入札済み)など、竣工時に大きな話題になった物件も少なくない。

ところで、住宅絡みの改革でいえば民主党政権下で行われた国家公務員宿舎の削減計画というのもあった。約21万8000戸のうち、4分の1強の約5万6000戸程度の削減を行うとして、2393カ所の宿舎の廃止が決定されたが、現在、それはどうなっているのか。

廃止対象となったうちの都心3区の宿舎16カ所のうちのいくつかを訪ねてみたが、状況はバラバラ。千代田区の二番町、ベルギー大使館のすぐ近くにある二番町住宅は解体中だったが、六本木一丁目駅徒歩1分ほどにある六本木住宅、港区のイタリア大使館近くにある三田住宅は無人のまま放置されており、南青山二丁目にある青山住宅はマンションが建設中だった。その後、2017年3月27日に森ビルが六本木住宅を150憶1000万円で取得したことが報じられたが、廃止対象の宿舎の住所が明記されていないため、全体の状況はつかみにくい。

2715もの住宅はまだ売却されていない

当初の予定では毎年、経過を報告、2016年度末までに約16万3000戸にまで減らすことになっており、2017年2月17日に開かれた財政制度等審議会国有財産分科会の提出資料を見ると、2016年9月現在で約5万4000戸、目標の97.2%まで達成したとなっている。

ただし、ここでいう削減とは「国家公務員がそこに住まなくなる」ということを指しており、必ずしも「売却した」という意味ではない。同資料では1007住宅を約2751億円で売却したことになっているが、利用しなくなった宿舎のうち、民間からの借入住宅を除くと、2715もの住宅がまだ売却されずにいる。ただ利用しなくなるだけでは意味はない。早々に適切な額での売却その他活用を行っていただきたいものだ。

中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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