「企業努力」による保険料の引き下げも必要だ 「11年ぶり保険料改定」に感じる疑問

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集計の対象になっているのは、日本、第一、明治安田、住友、太陽、大同、富国、三井、朝日、ソニー、ジブラルタ、アクサ、アフラック、メットライフ、東京海上日動あんしん、かんぽ生命の16社です。

基礎利益とは、一般の企業でいうと、本業の成果を表す「営業利益」に近い性質のものです。

保険料には、死亡保険金や入院給付金などの支払いに必要なおカネ、保険会社の運営に必要な経費、保険料を運用する際の利率が見込みで反映されています。

したがって、保険金等の支払いが見込みより少なければ差益が出ます。「危険差益」と呼ばれるものです。経費が抑えられた場合、運用がうまくいった場合も差益が出ます。これらの合計が基礎利益です。

基礎利益の中で、最大の収益源は危険差益です。大手4社の2016年3月期の数字を表にまとめてみました。

  保険料等収入 基礎利益 危険差益
日本生命 6兆0809億円 6981億円 4320億円
第一生命 2兆8666億円 4654億円 3555億円
明治安田生命 3兆3578億円 4599億円 2679億円
住友生命 3兆0220億円 3082億円 3144億円

程度問題としてどうなのか?

保険会社の健全な経営のため、保険金等を支払う確率をあらかじめ高めに見込んでおくのは、大切なことだと思います。とはいえ、程度問題としてどうなのでしょうか。

危険差益は、例年、ほぼ確実に発生するのです。そうであれば、保険会社ならではの収益源を基に、マイナス金利下でも魅力的な貯蓄商品を提供できるのではないか、と思うのです。

仮に、加入者が毎月1万円、積み立てできる10年満期の貯蓄商品を用意し、2%の金利を約束すると、積立額120万円に対し、10年後に130万円強を払い戻すことになります。単純計算で、毎年、加入者1人当たり1万円強の利息を支払う体力があればいいわけです。

加入者が500万人いる場合、必要な額は、500万人×1万円=500億円です。毎年数千億円の危険差益を生む会社であれば、難しくないように思えます。

たとえば日本生命の場合、1167万名のお客さま(同社ディスクロージャー誌より)が全員加入しても、1167億円の拠出と試算されます。4320億円の危険差益に占める割合は27%、基礎利益に占める割合は17%弱です。それは同社の経営基盤を危うくする額なのでしょうか。

申し込みが殺到し経営が脅かされる懸念がある場合、利用限度額や定員を設け、期間限定募集にする手もあるでしょう。若くて健康な新規加入者が集まれば、保障目的の保険を案内する際、貴重な顧客リストが用意されていることにもなるのです。こうした試みは、やろうと思っていてもできないことなのだろうか、と感じるのです。

もとより、筆者は、保険の存在意義は「まとまっていないおカネ」で「まとまったおカネ」を用意できる保障機能にあると認識しています。貯蓄商品の開発や品質維持に回すおカネがあるのなら、保障を提供する商品の価格を下げるほうが本筋か、とも考えます。

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