パナソニック改革、成長ストーリーは本物か 自前主義から脱却、外部との連携に賭ける

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ハスマンに対してパナソニックは異例の措置をとった。そのひとつがブランド利用料の免除だ。通常、パナソニックは企業を買収して傘下に収めると、その企業はパナソニックのブランド利用料を支払わなければいけないが、ハスマンは支払っていない。

「これまでは買収するとすぐにパナソニックウェイというか、商標ややり方などをパナソニックに合わせることで相手が疲弊していく部分があったが、今回はそれをできるだけなくした」(富永室長)。送り込む社員も絞り込み、これまでと異なるPMIを実施した。

ハスマンは米国の寡占市場の中で安定した地位を築いており、買収時の営業利益率も7%とパナソニックよりも高い。独立性を保ちながらシナジーを追求した方が利益の上乗せが期待できるとの判断だ。

津賀一宏社長は1月、ロイターのインタビューで、米企業の経営手法にについて「利益をどのように作っていくのかで、すべての決定が行われている。日本メーカーはよい商品を作ればきっと儲かるという発想だが、BtoBは必ずしもそういうことではない。その意味で、学びも大きい」と語った。

マイクロソフト樋口氏を呼び戻した意味

2月28日、パナソニックが発表した人事が業界の注目を集めた。新任役員の欄に日本マイクロソフト会長(当時)の樋口泰行氏の名前があったからだ。

樋口氏は大学卒業後に松下電器産業に入社したが、約10年後に松下を飛び出し、米ハーバード大学経営大学院に留学。その後は日本ヒューレット・パッカードやダイエーなど様々な企業で経営の指揮を執った。松下幸之助氏の時代は外部の人材が経営幹部になることはあったが、最近は生え抜き以外が役員になることはほとんどなかった。樋口氏を呼び戻したのは、更なる改革に向けた津賀社長の強い意志の表れともいえる。

樋口氏だけではない。このところ外部人材の登用が相次いでいる。2016年1月にはメリルリンチ日本証券の調査部長だった片山栄一氏がM&A(企業合併・買収)担当の役員として入社。樋口氏と同じ4月1日付でSAPジャパンのバイスプレジデントチーフイノベーションオフィサー、馬場渉氏が北米子会社「パナソニックノースアメリカ」の副社長に就任した。

津賀社長は3月30日、社員向けに開いた経営方針説明会で、樋口氏の人事について、従来のパナソニックにはない、新しいチャレンジに向けたものだと強調した。

4月1日付で設立した「パナソニックベンチャーズ」も社外からベンチャーキャピタリストを招く。外部人材に託すのは、既存の事業領域にとらわれない、非連続の成長につながる可能性を秘めた事業の目利きだ。

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