ディズニーキャストが見た「理想のリーダー」 「感動」を分かち合うチームは結束力が強い

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なぜこのようなスタイルをとっているかといえば、ディズニーの企業ビジョンや空気感を体験してもらうということがあります。また、採用されたのちに、同じようにゲストを笑顔で出迎えてほしい、という思いも込められています。

また、面接における質問にも工夫が必要です。面接担当者は「あなたの強みはなんですか」というようなポジティブな質問を多くする傾向があります。それも確かに必要なのですが、あえて挫折経験や失敗経験を聞くことで、相手の本質がより浮かび上がってきます。

私自身、オリエンタルランドの最終面接で「あなたにとって最大の挫折経験はなんですか」と聞かれました。実は、その時私は「父の事業の失敗により夜逃げをした」という過去を告白しました。企業の与信調査においては、かなりのマイナスです。ようやく進めた最終面接の機会――。少しだけ迷いましたが、私はそこで開き直って、苦労をどう乗り越えたか包み隠さず話しました。

そして「最終面接まで進んだことが私にとっては奇跡で、ここで落とされても悔いはありません」と伝えました。それを聞いた面接官は、しばしの沈黙ののち、「ウォルト・ディズニーが苦学生だったことを知っていますか」と言いました。

「彼の父も事業に失敗していて、ウォルトも子どもらしい子ども時代を過ごせませんでした。それが彼の原動力となり、子どもに夢を与える場所をつくったのです」

この面接官との出会いがなければ、私の人生は大きく変わっていたはずです。採用は、人材育成の最初の一歩。面接官には応募者の本質と向き合う姿勢が求められます。

感動をシェアすることで、チームが育つ

人を育てるうえでもっとも重要なのが、「モチベーションをいかに高めるか」ということ。ディズニーでは、「感動のシェア」に力を入れています。

私が新人時代、研修で園内の清掃をしていた時でした。ふと、10歳くらいの女の子と、その傍らでたたずむ男性の姿が目に入りました。女の子の表情は沈んでおり、父親の男性は途方に暮れた様子でした。

私は緊張しつつも、思い切って「どうされましたか」と声をかけてみました。すると男性が「ミッキーに会える場所がわからなくて……」と弱々しく答えました。そこで私は、ミッキーマウスのいるアトラクションへご案内しました。

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