関テレ「公安ドラマ」は世界でヒットするのか 世界での放送・配信を目指す地方局の挑戦

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海外進出を阻む要素は3つほどある。まず「話数の少なさ」。買い付けたドラマがヒットした時、なるべく長く楽しんでもらいたい。これはテレビ放送枠でもSVODでも同じで、おおよそ50話ぐらいが目安になっているという。ところが日本のドラマは1クール10〜12話で完結する。少ない話数がSVOD視聴者に好まれるケースもあるが、多くのバイヤーは避ける傾向にある。

もうひとつは「人種や文化的な違い」。大きな予算を持っている欧米のバイヤーからの買い付けには、これが大きなハードルになる。これも決して低いハードルではない。

国内市場が中途半端に大きい

さらに、もうひとつ壁がある。それは国内市場が中途半端に大きいことだ。国内市場が大きいため、日本の放送枠を確保することが最優先となり、グローバルで作品を販売していく意識を持ちにくい。たとえ制作者や監督が国際化を重視していたとしても、現実には日本市場……いや、日本の大手キー局が好む番組作りへと意識が向いてしまうのは致し方ないところでもある。

そうした中で、岡田氏によると元々、関西テレビには”内向き”の番組企画を重視する傾向が希薄で、自分たちの作りたい作品を制作する傾向が強かったという。それに加え、今回の小さな成功が関西テレビ全体の意識を改革しはじめている。

終演後に挨拶する西島秀俊氏(筆者撮影)

CRISISは必ずしも海外市場への販売を前提にした作品ではなかったが、チーフプロデューサーの笠置高弘氏は、かねてより海外でも通用するドラマ作りを志向してきた。そこに加え、カンヌの会場に関西テレビの制作、編成、販売、報道などあらゆる部門が集まり、手作りでワールドプレミアに取り組んだことで、自分たちの作品がグローバルで通用する可能性を感じ、組織全体の意識が変わり始めた。岡田氏は次のように言う。

「上映会場の行列を整理していたスタッフが、感極まって涙を流し始めたんです。その様子を見たうちの笠置プロデューサーは、グローバルで勝負できる作品作りへの想いをより強くしたようです。『自分たちを変えていこう』『グローバル市場に目を向けよう』というムーブメントを社内に布教していくうえで極めて重要なターニングポイントになると確信しています」

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