「中国崩壊論」は全部ウソ! 人は事実より、信じたいことを信じる弱い生き物

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中国にバブルがあるのは事実だが、それに感謝すべき?

私は中国にバブルがないなどとは言っていない。中国にバブル経済があったのは数年前から明らかであり、特に世界金融危機の2008年の後には巨額の財政拡大のみならず、金融緩和を前年の7倍とかの勢いで進めたのが一因だ。また外国人投資家も欧米以外に資金を逃避させ、エマージングマーケットで稼ぐとなると中国に資金を殺到させ、楽観的すぎる経済見通しに基づき資産価格の高騰を招いてきた。

ただ、反面、世界金融危機のショックを吸収するために、中国当局はこのリスクをわかりながらも、巨大な需要拡大政策で世界経済の大きな下支えをしてくれたことを、われわれは評価しなければならない。

当時、中国はまだ世界3位の経済規模だったが、アメリカや日本、ヨーロッパがこけている中で、ほぼ孤軍奮闘で世界経済を牽引してくれた。当時の企業レポートを読めば、どこもかしこも「中国の需要が堅調に推移し……」などの表記が目にできたはずだ。

世界金融危機が続み欧米と日本が不況に沈む中、中国の経済刺激政策が世界経済に果たした役割はたいへん大きく、今や中国がこければ世界の経済にも大きな影響があり、それは日本も例外ではないのだ。同じ理由で私は、日本の経済も韓国の経済も中国の経済も欧米の経済も、全部うまくいくことを願っている。統合された世界経済、結局、自分に影響がくるのだから。

いくら巨大化する中国が面白くなくても、中国崩壊論を期待したり、問題だらけの現実に向き合わず“日本経済最強論”などのうえでアグラをかくのはもってのほかであろう。

メディアリテラシーの基本

今回、私は尊敬する東洋経済のほかのコラムニストやインタビュワーの方の意見と異なる意見を書くという禁じ手を繰り出したわけだが、東洋経済コラムニストの集まりで村八分にされたらどうしよう。

しかし読者の皆様におかれましては、私を含めてひとりの意見を鵜呑みにせず、問題を判断する際の視点を拡大し、情報源の信頼性を検討していただきたい。私は今回、中国の金融業界で働く現役のバンカーや中国の中国語の新聞に載っているローカルな情報を基に執筆したわけだが、それと正反対のことが書かれている記事を見比べて、総合的に判断することが、皆様の知的なジャッジメントを助けるであろう。

そして読者の皆様のメディアリテラシーを強化するうえでも、異なる視点や意見を幅広く提供する東洋経済オンラインのプラットフォームはさすがだな、と最後にヨイショさせていただく次第である。

ムーギー・キム 『最強の働き方』『一流の育て方』著者

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Moogwi Kim

慶應義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA取得。大学卒業後、外資系金融機関の投資銀行部門にて、日本企業の上場および資金調達に従事。その後、大手コンサルティングファームにて企業の戦略立案を担当し、多くの国際的なコンサルティングプロジェクトに参画。2005年より外資系資産運用会社にてバイサイドアナリストとして株式調査業務を担当した後、香港に移住してプライベート・エクイティ・ファンドへの投資業務に転身。英語・中国語・韓国語・日本語を操る。著書に『世界中のエリートの働き方を1冊にまとめてみた』と『一流の育て方』(母親であるミセス・パンプキンとの共著)など。『最強の働き方』の感想は著者公式サイトまで。

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