どこまで進んだ?梅田-関空直結「なにわ筋線」 JR・南海に続き線路幅の違う阪急も参入検討

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一方、最近になってメディアを賑わせた「阪急の接続」については、まだこれからといったところのようだ。

阪急電鉄によると、十三―北梅田間の新路線構想について「決定した事実は何もない」という。だが「この区間をつなげることで、阪急沿線と中之島や難波、関西空港までの鉄道ネットワークが生まれるため、整備は有益であるとの共通認識はある」といい、現状については「なにわ筋線に関連した路線ということでわれわれ(阪急)も加えていただき、5者で検討を進めていきたいという段階」と説明する。市によると、5者で協議する方向なのは十三―北梅田間についてで、北梅田―難波間は従来通り4者で協議するという。

新線によって、もし阪急がなにわ筋線に乗り入れるとすると、問題となるのが線路幅の違いだ。阪急は新幹線と同じ1435ミリメートルの「標準軌」であるのに対し、JRと南海は1067ミリメートルの狭軌。なにわ筋線に合わせるなら新路線は狭軌とする必要があるが、現状では「そういった点も含めて(新路線構想自体の)検討はこれから」(阪急)という。

この新線構想とは別に、阪急は十三―新大阪間を結ぶ「新大阪連絡線」について以前から路線免許を保有している。こちらについては「免許もあり、用地も取得しているので(整備の可能性は)ゼロではない」(阪急)。将来的には、阪急沿線から新大阪や関空へ通じるネットワークができる可能性もありそうだ。

別の新線構想との兼ね合いは…?

一方、十三と梅田方面を結ぶ路線については別の構想も存在する。大阪市営地下鉄四つ橋線の西梅田駅と十三駅を結ぶ「西梅田・十三連絡線」だ。今回浮上した十三―北梅田間の新路線構想とはルートがほぼ重なることになる。

この点について市は「どちらかのルートになるだろうが」としたうえで「(十三―北梅田間の路線については)建設できるかどうかを含めまだ検証されていない段階のため、どうなるかはまだわからない」という。

だが、西梅田・十三連絡線は、地下鉄四つ橋線を南海電鉄と接続し、さらに阪急の新大阪連絡線を整備することで、なにわ筋線よりも低コストで新大阪と関空を結ぶ路線として検討された経緯がある。なにわ筋線の実現に向けた動きが進んだ今となっては、同連絡線の構想が実現するかは疑問符が付きそうだ。

大阪中心部からのアクセスの不便さが指摘されてきた関西空港と梅田方面を結ぶなにわ筋線。阪急の十三―北梅田間新路線構想も含め、大阪の鉄道を大きく変貌させる可能性のあるプロジェクトだけに、今後の進展が期待される。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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