どこまで進んだ?梅田-関空直結「なにわ筋線」 JR・南海に続き線路幅の違う阪急も参入検討

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構想が動き始めたのは2009年。当時の橋下徹大阪府知事が関空の活性化に不可欠であるとして国に働きかけ、同年夏から国土交通省近畿運輸局が事業化に向けた調査に入った。2011年度にかけて行われた検討の結果、概算の建設費は約1800億〜3200億円、需要は1日当たり14万〜21万人と予測され、最短21年で黒字転換が可能と見積もられた。

2014年からは、大阪府と市、JR西日本、南海電鉄の4者が協議を開始。JRと南海の乗り入れに関する調整に時間がかかっているとされていたが、大阪市の吉村洋文市長は今年1月26日の会見で、両社が「最終の調整協議が行われている段階」に入っていると明らかにし、2030年ごろの開通に向け「年度内に方向性を示せるようにしていきたい」と述べた。

その後、3月中旬には阪急電鉄が同社の京都線・神戸線・宝塚線の3路線が集まる十三(じゅうそう)駅から北梅田までの新線を検討していると新聞各紙が報道。なにわ筋線とその周辺の話題が急速に盛り上がることとなった。

JRと南海が運行事業者に

なにわ筋線と関連路線の概略図(各種資料をもとに作成)

2016年度内の最終合意には至らなかった協議だが、現在はどのように進んでいるのだろうか。大阪市によると「まだ詰めるところがあるため、現在協議している」状態だという。

これまで調整に時間がかかっていたとされるJRと南海の運行形態については、市によるとJRと南海がそれぞれ「第二種鉄道事業者」となる方向で協議しているといい、路線の整備・保有は第三セクターが行うことを検討している。

第二種鉄道事業者とは、簡単にいえば他者が保有する線路を使って列車を運行する鉄道事業者のこと。この場合でいえば、三セクが建設・保有する線路の上で、2社がそれぞれの列車を運行する形となる。同種の例としては、関空への連絡橋を渡るJR関西空港線と南海空港線がある。連絡橋のあるりんくうタウン―関西空港間の線路は新関西国際空港会社が保有しており、JRと南海は第二種鉄道事業者として、同じ線路を使ってそれぞれの列車を運行している。

JRが工事を進めている北梅田―新大阪間に南海の列車が乗り入れるかについて、南海電鉄は「協議中」との答え。市は、南海も新大阪まで乗り入れる方向で検討しているといい、両社ともに新大阪―関西空港間を結ぶ列車が走ることになりそうだ。

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