風化させてはならない野村證券の「功」と「罪」 バブル最前線を知る2人が語る現代への警鐘

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永野:1987年に上場したNTT株が119万円余りで売り出されて、初値が160万円、そこから318万円まであっという間に値上がりしたのが典型的なバブル。

横尾:野村證券でNTTを1株も買ったことがないのは僕だけ。最初から大反対して、株式部と大げんかして「じゃあ買うな」と言われたので、買わなかった。

バブルを誘導したい安倍政権への疑問符

永野:僕は、「バブル」を書いてから、いろいろな人から「安倍晋三を嫌いでしょ」と聞かれますが、そんなことはない。現状においては、認めざるをえないところがある。民意が、蓮舫・民進党では困るなと思っているからです。自民党に頑張ってもらうしかない。しかし、アベノミクスといわれる経済政策には間違いなくズレがある。

国債買いとか、株をガンガン買わせるのは、デフレ脱却の文脈では歴史の流れかもしれません。ですが、そのリスクを本当にわかっているのか。菅義偉官房長官の株高政策はバブルのにおいがする。これだけの国民の資産を株式や国債などに引っ張り出したら、「バブルが最後の答えとして出てくるよ」というのは避けられない答えだと思う。だからこそ30年前に何があったかを掘り起こさねばと思いました。30年というのはジャーナリズムと歴史の均衡点にあたるので、書き残しておきたい気持ちですね。

「アベノミクスといわれる経済政策には間違いなくズレがある」と永野氏(撮影:尾形文繁)

横尾:僕が野村證券で1989年にM&A部門にいたときにブーン・ピケンズによる小糸製作所の乗っ取り事件がありました。外国企業に何社買収されたら日本が日本でなくなるかを計算しました。だいたい50社乗っ取られたら日本でなくなるなと思いました。その会社を守るためにM&Aをやるという意識でした。

バブル崩壊後ですが、ざっくりいうとアメリカは10倍の株価、ヨーロッパは3倍、日本は半値以下。とすると、日本がバブルの兆しがあると言われていますが、なんで株価が半値で止まっているのか? 先進国で唯一日本だけが低迷状態なんです。結局どんどん力を失っている。これから足場を固めないといけません。いちばん怖いのは急激な円高でたたいておいて、円安に転換されること。200円超えたら大変なことになる。トランプは何するかわからないから、そうなったら日本は総崩れになる。そこに安倍政権がきちんと対応できるかどうか。

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