自民・公明の連立に「すきま風」が吹きすさぶ 「錨(いかり)」が「怒り」に変わる時が来るのか

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昨年秋の臨時国会会期末に自民党が日本維新の会と連携して、公明党を無視する形で「カジノ法案」を"超短時間審議"で成立させた時も、自公関係はぎくしゃくした。そのあと首相は年末のクリスマスイブに維新の会を率いる橋下徹前大阪市長と松井一郎大阪府知事(維新の会代表)と会食したが、周囲の助言で急きょその2日前に、公明党の山口・井上両氏をフグ料理でもてなすという「配慮」を強いられる一幕もあった。

そもそも、外交・安保政策などで「タカ派色」が際立つ安倍政権と「平和の党」を掲げる公明党では、「政治理念では距離がある」(幹部)ことは否定しようがない。第2次安倍政権発足以降、公明党は連立維持を「公明党が安倍自民の暴走を食い止める錨(いかり)の役目を果たすこと」(党首脳)と意義づけてきた。しかし、4年を超える安倍政権の下支え役について、党内からは「どこまでもついてゆく『下駄の雪』といわれ、我慢にも限界がある」(長老)との声もあり、「いつか、『錨』が『怒り』に変わる時が来る」(同)ことも否定しない。

都議選後に「ほほえみにめぐりあえる」場面は?

こうした連立崩壊への危機感からか、首相は3月30日、首相公邸に山口氏ら公明党幹部を招き、二階幹事長らとともに昼食を共にしながら懇談した。共謀罪法案審議での合意は得られなかったが、首相は山口氏と2人でほぼ満開となった官邸南庭の彼岸桜を観賞し、笑顔で握手しながら「花びらは簡単には散らない」と口をそろえて結束をアピールしてみせた。ただ、首相と山口氏の会話を取材した記者たちには「どちらも目を合わさず、わざとらしいやり取りに終始した」ように見えたという。

風速を増す"すきま風"のとりあえずの"終着点"は3カ月後の都議選だが、小池新党との共闘で公明の「全員当選」が実現する一方で自民惨敗という結末になれば「首都・東京での自公対立は決定的となり、自公連立政権の亀裂も拡大する」(自民長老)ことは間違いない。自民党内からは「出ていけるものなら出ていけ」(幹部)との声も聞こえてくる。昭和の流行歌「すきま風」のサビの一節は「いいさそれでも 生きてさえいれば いつかほほえみに めぐりあえる」だが、はたして都議選後に首相と山口氏が「本物の笑顔」で結束を誓い合う場面が実現するのかどうか。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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