「精神科医の禅僧」が教える、心を休める方法 知ると役に立つ「4つのR」

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今、日本では若い世代の「自己肯定感」が世界の中でも圧倒的に低いことが統計から明らかになっています。「自己(自己愛)との闘い」が、幸福に生きてゆけるか否かの最大のテーマと言えます。

自らの呼吸、姿勢、そしてさまざまな心のありようと向き合うことを、日々少しずつでも続けることで、やがて自己の存在に対して、たとえそれがどんな状態にあっても「優しく受け止めてあげる」という立場を取れるようになるのです。

成果主義に追われる現代人にこそ必要なこと

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こうした心のありようを心理学の言葉で「セルフコンパッション(自己への慈悲)」と呼び、成果主義に追われる現代人にこそ必要であるとして、近年世界的に注目を集めています。

私も毎年秋には瀬戸内海に浮かぶオリーブのふるさと、小豆島にて、1泊のリトリートを開催するお手伝いをさせていただいています。忙しい仕事の日々からほんのひと時、自然の中で自らの心と体と向き合い、その声に耳を傾けるための場所へと身を移してみてはいかがでしょうか?

ところで最初にご紹介した過労状態を経験された元患者さんですが、この「4つのR」を実践するなどした結果、現在はかつての夢だったフリーフォトグラファーとして日本の地方を巡り、ご自身で仕事をマネジメントするスタイルで、四季折々の魅力を世界に伝える活動をされています。「4つのR」を体現した彼女が手に入れたものは、単に心身が回復したという事実をはるかに上回る、ご自身へのコンパッション(慈悲)という大きな宝物だったのではないでしょうか。

川野 泰周 臨済宗建長寺派林香寺住職/精神科・心療内科医

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かわの たいしゅう / Taishu Kawano

精神科医・心療内科医/臨済宗建長寺派林香寺住職。精神保健指定医・日本精神神経学会認定精神科専門医・日本医師会認定産業医。一般社団法人日本モメンタム協会理事。
1980年横浜市生まれ。2005年慶應義塾大学医学部医学科卒業。臨床研修修了後、慶應義塾大学病院精神神経科、国立病院機構久里浜医療センターなどで精神科医として診療に従事。2014年末より横浜にある臨済宗建長寺派林香寺住職となる。
現在、寺務の傍ら都内及び横浜市内のクリニック等で精神科診療にあたっている。
 

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