「新卒一括採用が当然」という時代は終わった コスト削減よりマッチング精度の方が重要だ

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企業にとっては主にコスト面のメリットが大きいのですが、社会全体でみると、若者の失業率の低下という意味においても重要な役割を果たしています。欧米式の「空いたポジションに人を入れる」方式の場合、スキルが弱い若年層にはどうしても厳しい結果となります。

一括採用には日本型雇用の歴史が関係している

ただ、日本において新卒一括採用が定着しているのはそれだけが理由ではありません。日本型雇用の歴史が関係しているのです。戦後の高度経済成長期における右肩上がりの時期において、日本企業は多くの労働力を確保する必要がありました。地方からの集団就職などによって、一度に多くの労働力を確保してきたのです。

また、当時の「働き方」は「働き方改革」が叫ばれる現在とは大きく異なり、「どんな仕事でも」「どんな場所でも」働くという職務無限定、配置転換無限定のものがほとんどです。そして、新卒で経験・スキルがなくとも、「若くて素直」な画一的人材を会社に入社してから教育によりスキルを身に付けさせればよいという考え方でした。賃金体系も年功序列なので、年次でグルーピングしたほうがわかりやすいというメリットもありました。このように、右肩上がりの経済の中で、終身雇用・年功序列といった雇用慣行の下、画一的な人材を大量に採用する必要から、日本において新卒一括採用が定着していきました。

ひるがえって現代においても、新卒採用は変わらず主流となっています。しかし、背景事情はどうでしょうか。バブル崩壊後、失われた20年、30年ともいわれる中、大企業でもリストラは常態化し、終身雇用は崩壊しています。「同一労働同一賃金」が標榜され、勤続年数ではなく、具体的スキル・経験による職務能力に対して賃金を支払うという方向性に傾き、年功序列についても終わりが始まりました。

その中で、企業が新卒採用にこだわり続ける意味はどこにあるのでしょうか。「周りの企業がそうしているからなんとなく……」という企業は、新卒採用の意味を考え直すべきだと思います。

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