出光・創業家の対立がヒートアップする事情 「昭和シェルとの合併阻止」で訴訟に発展も

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昨年10月、合併延期発表に臨む出光興産の月岡孝社長(右)と昭和シェルの亀岡剛社長(撮影:尾形文繁)

3月28日、出光興産の創業家は出光昭介名誉会長などの連名で、昭和シェル石油との合併にあらためて反対する申入書を提出した。

従来の反対理由は社風の違いなど抽象的なものにとどまっていた。だが今回は、両社の製油所の多くが近接すること、昭和シェルの太陽光事業が赤字に陥っていることなど問題点を詳細に指摘した。

「経営統合(合併)は必ずや成し遂げる」。3月10日、販売店関係者を集めた会合でそう宣言した月岡隆社長など出光経営陣への強烈なカウンターパンチだ。創業家の代理人だった浜田卓二郎弁護士が2月に辞任したことで生じた“雪解け”への淡い期待は、雲散霧消した。

創業家は条件闘争を否定

創業家が合併に反対するのは、「昭介氏の二男である正道氏を取締役に就けるための条件闘争ではないか」という憶測が一部に根強くあった。しかし、浜田氏の後任である鶴間洋平弁護士は、本誌に対しこれを完全否定。3月1日の記者会見以降、創業家は合併そのものに反対していることを明確に打ち出しているのも、こうした憶測を打ち消す狙いがあると打ち明ける。

月岡社長は、合併の延期を表明した昨年10月の記者会見で、「1年以内に合併を実現したい」と力を込めた。が、ほぼ半年が過ぎても創業家との会談すら実現していない。

創業家は合併を拒否できる議決権の3分の1以上の株式を保有している。そのため鶴間氏が「自主的に取り下げてもらえると思っている」と言えば、月岡社長は「説明すれば創業家もわかってくれる」と、お互いボールを投げ合うだけ。双方、歩み寄る気配すらないまま6月下旬の株主総会を迎えることになれば、昨年6月に起きた月岡社長以下の取締役選任をめぐる対立劇が再演される可能性は高い。

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