スカイマークが破綻から急復活できた舞台裏 「安売り」「羽田依存」のジレンマは不変だが…

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収益性が回復しつつあるとはいえ、売り上げの伸びは頭打ちだ。利益の大半を稼ぎ出す羽田空港は発着枠を使い切っており、現状は便数をこれ以上増やすことができない。

だからといって機材を大型化したり地方路線を拡大すれば、経営破綻の二の舞いになりかねない。破綻で頓挫した国際線進出に向けては、まず年内にチャーター便を計画するが、LCCとの競争は激しく定期便就航は容易でない。

戦略の成否は、出資者の出口戦略にも影響しそうだ。スポンサー株主間の契約では、2015年9月に裁判所が再生計画を認可した時点から、5年以内の再上場を目指すとしている。

「上場する際には、航空会社としての独立性を打ち出す」と佐山会長は意気込む。だが、証券市場からは「成長株として買うための、明確なストーリーがない」(野村証券の広兼賢治アナリスト)と冷めた声も上がる。

2000年前後の規制緩和で参入した新興航空会社は軒並み、経営危機でANAの出資を受けた。ANAの予約システムを用い、コードシェアも実施。だがスカイマークは、システムの共有は独立性を損ねるとして拒否している。

運賃の推移は新興3社とANAは酷似しているが、スカイマークだけが異なる。「ANAにとっては“目の上のたんこぶ”だろう」(航空会社OB)。

新生スカイマークは巡航速度に入ったが、その先の視界はまだ開けていない。

中川 雅博 東洋経済 記者

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なかがわ まさひろ / Masahiro Nakagawa

神奈川県生まれ。東京外国語大学外国語学部英語専攻卒。在学中にアメリカ・カリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。2012年、東洋経済新報社入社。担当領域はIT・ネット、広告、スタートアップ。グーグルやアマゾン、マイクロソフトなど海外企業も取材。これまでの担当業界は航空、自動車、ロボット、工作機械など。長めの休暇が取れるたびに、友人が住む海外の国を旅するのが趣味。宇多田ヒカルの音楽をこよなく愛する。

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