帝人・大八木会長、「好奇心」で切り拓く未来 「医薬」を主力事業に育てた立役者が語る

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――全くそれまでタッチしていなかった帝人の医薬事業が今では主力事業となっているが、どのように事業を実現化したのか。

元々、私が入社した頃に帝人には「未来事業をつくっていく」という本部がございまして、そこでいろいろな新しいプロジェクトをやっていました。その中の最後に残された大きな、いわゆるプロジェクトを立ち上げたという意味で、ゼロからの出発ということになりますね。

特に私が戻ってきた1976年は、日本経済は高度成長期がちょうど転換期にかかって、第1次オイルショックが始まった頃ですから、そういう意味で、いわゆる経営者も相当覚悟して新規事業に乗り出すということだったと思います。

――ゼロから本当に事業として成り立つまでにどうしたらいいか、かなり勉強されたそうだが、それを実現させることや引き継ぎのポイントは。

医薬品というのは人の命に関わることなので、これには、いわゆる物質の安全性であるとか、効果だとか、そういうものを長い時間と相当の先行投資をかけて究めていかなきゃいけない。そういう宿命のある事業なんですね。

そういう時に、当時は研究開発であるとか、生産であるとか、あるいは行政に対して申請を出すとか、販売、あるいは販売後のいろんな情報集約が一切、何もないわけですから。プロにいろんなことを教えていただかないと、事業の構想が成り立たない。そういう時代でしたね。

従って私どもは、いろいろな製薬企業に対する投資もありますけど、できる限りいろんな専門家を集めてお話を聞きながら、それぞれの機能を立ち上げていく、そういうスタートということですね。

成功者側に立つポイント

――当時は社長がいて、社長が「これをいかにやる」という強いコミットメントがあったと思うが、成功するためのポイントや必要なことは。

医薬品自体は一定のプロセスで評価をしなきゃいけないということが法的にも確認されていますので、それぞれの、いわゆるレベルの段階でのチェックは全部関わってくる。

そういう意味では、成功するかしないかというのは、かなり明確にわかってくるわけですが、事業全体で見ると、開発が成功しても、その後の営業でうまくいくかどうかもわかりません。そういう意味では、最後に事業が大きくなるまでは、どういう形になるかというのは、明快にはわからないです。

ただ、そういう苦労している段階で、やはり私どものトップからいくつかの重要なメッセージというのは、担当者に届いていました。一番大きな点は、やはりトップ経営者が「この医薬品事業というのは、将来のこの会社を支えるような大きな事業にするという覚悟を持ってやっている」というメッセージが発せられてきました。

あと1つ面白いことは、言い方の中に「いかなる環境下でも必ず勝利者がいる。そのほうにどうやって立つか。ここをきちんとわきまえていかなきゃいけない」というメッセージとかですね。

あるいは、「最大の課題は『素人がプロに挑戦する』と。どうやってプロになるかということを、努力と研鑽(けんさん)できちんと作ってほしい」というメッセージがありましたね。私ども皆、燃えて事業に取りかかったというのが本音ですね。


――やはり、リーダーの強い意志が下にまで伝わることは、かなり重要なこと。

これは大切ですね。これがないと恐らく新規事業というのは成り立たないと思いますね。

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