JR北海道の経営危機を救う「5つの解決策」 危機の原因は不祥事や災害でなく「構造的」だ

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では、現実的に考えられる解決策としてはどんなものがあるだろうか?

1つ目は、一部路線の第三セクター化だ。だが、他県では成功事例もあるが、北海道の場合は池北線(池田-北見間)という「オホーツクと十勝を結ぶ」主要ルートの鉄道を「ちほく高原鉄道ふるさと銀河線」として三セク化したものの、最終的には廃線に追い込まれた苦い前例がある。

そこで考えられるのが2つ目の「上下分離方式」である。つまり、線路や地上設備についてはJR北海道ではなく、道や地方公共団体による「第三セクター」に保有させて、JR北海道の資金負担を低減するというものだ。北海道ではすでに実例があり、宗谷線と石勝線・根室線の高速化工事、そして学園都市線の電化工事については、道が約半額を出資し、一部は地元も出資した「北海道高速鉄道開発」という会社が設備を保有して、JR北海道は利用料を支払うというスキームになっている。

この方式を拡大して、上下分離を進めながら老朽化した設備を更新するということは考えられるだろう。車両の更新も、保有会社を作ってJR北海道がリースするという方法も採れるのではないか。

3つ目は、個々の路線別に「テーマ」を設定して、その「テーマに合う名目」で国などからの補助に期待するという考え方だ。

例えば、この間連続して検討を続けている道の「ワーキングチーム」の報告では、北海道の鉄道網を6つの類型に分けるという考え方が採られている。具体的には「札幌圏と中核都市を結ぶ路線」「広域観光ルートを形成する路線」「国境周辺地域や北方領土隣接地域の路線」「広域物流ルートを形成する路線」「地域の生活を支える路線」「札幌市を中心とする都市圏の路線」の6つだ。

この分け方には、「ロシアとの共同経済活動に関する予算」や「JR貨物の運行を維持するための補助金」「観光立国に伴う補助金」といった「財源」が、それぞれにイメージできる。本当に地域経済に役立つのであれば、そうした「名目」での補助を要請するということは必要だろう。

リゾート運営会社との連携は?

4つ目は、他のJR各社との提携だ。現在のJR北海道はJR東日本から人材を受け入れているし、北海道新幹線と東北新幹線の相互乗り入れ、豪華周遊型列車「TRAINSUITE四季島」の北海道乗り入れ、ネット顧客サービスの一部共用など、関係を深めつつある。

だが、JR東日本だけでなく、東海や西日本など経営余力のあるJRは全て上場企業であり、慢性的に営業赤字が見込まれる企業を吸収合併するという判断はできない。また、上場企業の厳格なコンプライアンスをそのまま適用していては、厳冬期を中心とした過酷な環境の中での運行コストが莫大なものとなる危険もある。

例えば「たまねぎ列車」で有名な石北本線や、並行在来線として存廃問題に直面している函館本線の長万部-小樽間(俗称「山線」)などは、JR貨物に移管ということも考えられる。だが、JR貨物は旅客鉄道会社とインフラを共有することで低コストを実現しているのであって、路線を保有しつつ価格競争力を出すのは難しいだろう。

5つ目は、鉄道事業会社ではなく異業種の企業に、一部の経営を引き受けてもらうというスキームだ。例えば観光に特化した路線については、リゾート運営会社などとの連携を重視し、場合によってはそうした企業に経営してもらうということも考えられる。

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