ラグビーが好きでない、ラグビーの名監督 コーチングディレクター、中竹竜二氏の好き嫌い(上)

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 本格的な評伝や自身による回想録を別にすれば、経営者の好き嫌いは外部からはなかなかわからない。その人の「好き嫌い」に焦点を絞って経営者の方々と話をしてみようというのがこの対談の趣旨である。この企画の背後にある期待は3つある。
 第1に、「好きこそ物の上手なれ」。優れた経営者やリーダーは、何ゆえ成果を出している のか。いろいろな理由があるだろうが、その中核には「自分が 好きなことをやっている」もしくは「自分が好きなやり方でやっている」ということがあるはずだ。これが、多くの経営者を観察してきた僕の私見である。
 第2に、戦略における直観の重要性である。優れた経営者を見ていると、重要な戦略的意思決定ほど理屈では割り切れない直観に根差していることが実に多い。直観は「センス」といってもよい。ある人にはあるが、ない人にはまるでない。
 第3に、これは僕の個人的な考えなのだが、好き嫌いについて人の話を聞くのは単純に面白いということがある。人と話して面白いということは、多くの場合、その人の好き嫌いとかかわっているものだ。

 こうした好き嫌いの対話を通じて、優れた経営者が戦略や経営を考えるときに避けて通れない直観とその源泉に迫ってみたい。対談の第5回は、企業の経営者 ではないが、日本のラグビー界のリーダーであるの中竹竜二氏(日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター)にお話を伺った。

日本ラグビー界初のコーチングディレクター

楠木:中竹さんの現在の肩書きであるコーチングディレクターというのは、どんな職業なのでしょうか。

中竹:わかりやすく言うと、コーチをコーチする立場のことです。

楠木:やはりラグビーのコーチの人を指導するのですか?

中竹:はい。日本ラグビーフットボール協会が新しく作ったポストです。このポストは、2019年に日本で初めて開催されるラグビーのワールドカップが関係しています。今、日本のラグビー界は、2019年に向けて選手を強化することが大きな目標となっていますが、ワールドカップを主宰するIRB(国際ラグビー連盟) から、選手の強化とともに、指導者を育成することも課題とされているのです。そこで、指導者を指導するコーチングディレクターが必要となったわけです。

楠木:中竹さんは、早稲田大学ラグビー部の監督として大学選手権に優勝したことで知られていますが、高校生のときからラグビー部の主将をやり、早稲田大学でも選手として主将をされていました。早くからリーダーとなり、経験を積んでこられた。コーチングディレクターは適任といえますね。

中竹:いえいえ。高校では確かに主将をしましたが、私の高校はラグビーの強豪校ではありませんでした。そのときの目標は、ラグビーをやっている高校生なら共通していると思いますが、1回でもいいから、県大会で優勝して花園(ラグビー場)に行きたいというもの。しかし、主将を務めた3年生のときは、県大会の準々決勝敗 退です。その後、いったん別の大学に入学したのですが、自分の限界までラグビーをやりたいと思って、普通に受験をして早稲田大学に入ったのです。

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