「森友解散」説ににじむ「1強」安倍政権の焦り 「軽率」と「誤算」の連鎖の果てに泥沼化

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そもそも、森友学園への国有地格安払い下げに至る財務省や国土交通省、大阪府の不可解な対応が「疑惑の核心」だ。しかし、財務省は「交渉記録」について「すでに廃棄した」とし、「手続きに瑕疵(かし)はなく、政治家の働きかけなどもいっさいない」の一点張りだ。一方、籠池氏は日本外国特派員協会での記者会見で「突然、風速の速い神風が吹いた」など、財務省などの首相サイドへの"忖度(そんたく)"により交渉が一気に進んだとの認識を示している。

疑惑の焦点が国有地払い下げの"からくり"よりも首相夫人のかかわりに移ってしまったのは、首相が「総理大臣も議員も辞める」と答弁したからだ。

首相夫人付職員の送ったファクスを見れば、籠池氏の「要望」を踏まえ財務省に問い合わせて回答したことは明らかだ。首相らは「完全なゼロ回答だから関係ない」と強調するが、「ノンキャリアの首相夫人付が財務省に問い合わせて回答したこと自体、昭恵夫人の指示や了解がなければありえない」(民進党)というのが霞が関の常識でもある。となれば、昭恵夫人が「交渉にかかわった」ことになり、そうであれば首相の進退問題にもつながるからこそ、「首相夫人は公人か私人か」という不可思議な論争も巻き起こった。

結果を見れば「事態の早期幕引きを狙った首相の強気の発言が、逆効果になった」(自民幹部)のであり、それが与党内から「首相発言は軽率だった」(自民長老)との苦言が出るゆえんだ。

飛び出した「3月末解散説」「5.23解散説」

野党が求めていた籠池氏の参考人招致を「民間人だから」と拒否してきた自民党が、「100万円寄付」の爆弾発言が出た途端、「首相を侮辱した」ことを理由に証人喚問に踏み切ったのも、「籠池喚問で幕引きにしたい」(自民国対)との思惑からだった。しかし、籠池氏が「100万円寄付」の状況を詳細に語り、その数時間後に昭恵夫人がフェイスブック(FB)で全面否定したことで「どちらかがうそを言っている」という"対決の構図"になった。有力な物証はないため「ないことをないというのは悪魔の証明」(首相)ともなり、仮に昭恵夫人が証人喚問で否定の証言をしてもそれで決着とはならないのが実情だ。

そこで急浮上したのが「森友解散」説だ。永田町では「首相が予算成立後に解散に踏み切る」との怪情報が飛び交い「3月末解散―4月23日投票」との具体的日程まで流れた。4月中旬の日米経済協議や月末の首相訪ロなどの外交日程と衆院選の事務手続きを考慮した「これしかない」(自民国対)という日程だ。

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