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形だけのガバナンス改革は不要
企業価値向上につながる取締役会改革とは?
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●社外取締役の貢献

酒井:取締役会の監督機能を向上させるうえで、社外取締役に期待される役割はより大きなものとなってきています。前述のアンケート意識調査によると、「貴社の社外取締役は、取締役会にどの程度貢献していますか」に対し、「あまり貢献していない」「貢献していない」は合わせて30%でした。社外取締役の役割が重要になってきています。

澤口:社外取締役の役割には多くの考え方があります。取締役会のスタイルは、大きく分けてマネジメント・モデルとモニタリング・モデルの二つ。社外取締役は、マネジメント・モデルでは、自分の経験に基づいて第三者の目線でアドバイスをし、モニタリング・モデルでは、株主の目線から株主利益が過度に犠牲にされていないかチェックします。後者の考え方は、社外取締役には独立性ある第三者として経営者を評価する機能を期待するものですが、社外取締役が2人程度でモニタリングできるかというと難しい。やはりもう少し人数を増やすことも検討しなければなりません。また経営者にはモニタリング・モデルの意味をより正確に理解してもらう必要があると思います。

川本 裕子
早稲田大学大学院 経営管理研究科 教授

川本:モニタリング・モデルの取締役会のいちばん根本にあるのは、場合によっては業績に応じて経営者を交代させることがある、ということです。その前提がないと、なかなか機能しません。ガバナンスは突き詰めるとチェック&バランスで、権力者をつくらない仕組みです。そのような中で、株主と経営者の利害の対立を解きほぐし、どうすれば企業価値最大化に向かっていけるのかを、取締役会はつねに考えなければなりません。

企業から見れば、社外取締役は一つの有効なツールとなります。日本企業の経営メンバーは極めて同質的なケースが多く、特に大企業は中途採用もとても少ない。ですから、企業自体が「多様性」を重視して社外取締役を活用すれば、リスクを回避し企業価値向上に資するはずです。ただ、企業、特にトップの意識が高くないかぎり、社外取締役は活用されず「お飾り」で終わります。企業の姿勢が問われています。

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