日本はなぜ「結核中蔓延国」から脱せないのか 大阪あいりん地区は南アと同じ結核罹患率

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日本に住んでいると、女性でも身の危険を感じることはめったにありませんが、この時ばかりは女1人で来たことを後悔しました。とはいってもここに立ち止まっているわけにもいかないので、旋回する男性を振り切り、奥に足を踏み入れます。

そこには、車いす姿の老人や、公園の木の上にある色あせたぬいぐるみをよだれを垂らしながら見つめる老人、道端で死んでいるかのように寝ている人や、段ボールとブルーシートとゴミの山の間でうごめく人たちの姿がありました。

結核とはどのような病気なのか

結核は、結核菌という細菌によって引き起こされる感染症です。

日本では、結核患者のうち肺結核が約8割を占めています。肺結核を発症すると、咳や痰(たん)、発熱など風邪のような症状が長く続くのが特徴ですが、皮膚結核、腎結核など、肺以外の臓器が冒されることもあります。

結核菌は、結核患者の咳やくしゃみなどによって空気中に飛び散り、その結核菌を吸いこむことによって感染が広がっていきます。

結核が厄介なのは、初めて結核菌を吸い込んだ人の約1割は、その後2年以内に結核を発症するものの、それ以外の人の体の中では結核菌は冬眠状態に入り、体内にとどまるからです。これらの人のうち、約1割程度は数年~数十年後に結核を発症します。

かつては「不治の病」とも呼ばれ、日本国内でも、樋口一葉、正岡子規、石川啄木など、多くの著名人も命を落としていることは皆さんもご存じかもしれません。

1950年の日本では、結核によって年間約12万人が死んでいました。しかし戦後、結核対策を中心とした保健所が設立され、地域ベースでの疾病対策を中心とした保健システムが構築されたこと、また、治療薬や予防接種(BCGワクチン)の普及、そして生活水準の向上などによって、結核によって亡くなる人の数は激減しました。

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