クスリの大図鑑 <アルツハイマー型認知症> 神経細胞死に着目! 「老人斑」を作らせない

 あなたのクスリ、合っていますか?−−自分や家族の飲んでいる薬をもっと知ることが健康や安心につながる。効き方から市場シェア、選択肢の有無、後発品との価格比較、新薬開発動向まで、主な12の病気のクスリについて掲載。

10年前は「残念です」の一言で済まされた認知症。記憶力と判断力が著しく低下し、日常生活の継続が難しくなる。単なる物忘れとは異なる。たとえば、朝ご飯に「何を食べたか」ではなく、「食べたことそのもの」を忘れてしまう。国内の認知症患者約200万人のうち半数がアルツハイマー型。徘徊や幻覚といった周辺症状がしだいにひどくなる。このため、以前は患者も家族もひたすら病気を隠すケースが多かった。

しかし、1999年、エーザイが開発した治療薬アリセプトの出現で、広く一般的な疾患として知られるようになった。

正常な脳は、入ってきた情報を側頭葉の内側にある海馬に一時保存した後、各部位に運ぶ。アルツハイマー病の初期には海馬周辺から病気が進行するため、まず短期記憶から失われる。同じことを何度も繰り返し聞く、新しい言葉を覚えられないなどの症状がそれだ。

脳内の二つの大きな異変 老人斑が神経細胞を殺す

アルツハイマー病患者の脳では二つの大きな異変が起こっている。

第一の異変は、神経伝達物質・アセチルコリンの減少だ。神経細胞間にはすき間が開いており、アセチルコリンの放出により情報が伝達される。だが、アルツハイマー病になると、アセチルコリンの量が大幅に減少し、情報伝達がおろそかになる。情報が伝達されないと、得た情報は記憶として定着しない。加えてアセチルコリンを分解する酵素の機能も強まるため、濃度はさらに薄くなる。

第二の異変は、神経細胞そのものの死だ。通常、神経細胞は、高齢になっても新しいものが作られ続け、脳に病気がないかぎり、減少することはない。しかし、アルツハイマー病になると、神経細胞が死んでしまい、数が著しく減少する。患者の脳細胞には、「老人斑」と呼ばれる斑点状の沈着が多発している。現在の仮説では、この老人斑の増加が、神経細胞の死を招くと考えられている。

エーザイが開発したアリセプトは第一の異変に対処する。アリセプトは、アセチルコリンを分解する酵素を阻害して濃度を高め(効き方[1])、神経の伝達がうまくいくようにする。現在、国内でアルツハイマー病に効く薬はアリセプトのみ。海外ではナメンダ(フォレスト)、エクセロン(ノバルティスファーマ)などが承認されているが、シェアは低い。

アセチルコリンの分解阻害剤は現在、貼り薬タイプが開発されている。欧米ですでに発売されているエクセロンパッチは、小野薬品工業とノバルティスが国内で治験の最終段階。アリセプトも治験準備を進めている。飲み忘れに対処できるうえ、吐き気など副作用の軽減という点でも注目されている。

だが、残念なことに、アリセプトは症状の進行を遅らせることしかできない。投与後まれに、症状が改善する場合もあるが、病気は徐々に進行する。

そこで今、第二の異変仮説に基づいて、各社、次世代アルツハイマー薬の開発に乗り出している。

ワイスが開発中の抗体薬バピヌズマブは、老人斑に直接働きかける。点滴で血液中に入った薬は、脳内血管から神経細胞へ到達し、沈着した老人斑の主成分を「食べ」て取り除く(効き方[2])

すでに沈着した老人斑を減らすうえ、生成も予防できるという点で注目度が高い。米国でアリセプトを共同販売しているファイザーも、老人斑の主成分を脳内から排出する薬を開発中だ。

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