「働き方改革」、でも教員は「蚊帳の外」の真相 公立校の「残業代ゼロ」明記した「給特法」

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西村さんによると、授業準備や未経験の競技の部活顧問に加え、事務作業が大きな負担になったという。とりわけ大変だったというのが、2泊3日の修学旅行の手配。業務の合間を縫って、一人でおよそ200人分の飛行機や宿泊先などの選定、手配を行った。周りの教員は多忙のため、誰も手伝ってくれず、ストレスで円形脱毛症になったという。

ちなみに、修学旅行は無事に終わったそうだが、深夜の見回りなど、いわば24時間勤務だったのに、残業代はゼロ。代わりについた手当は、3日間で1万円に満たなかったという(東京都では1日1700円)。

西村さんのように、精神に不調をきたす教員は後を絶たない。文科省によると、2015年度にうつ病などの精神疾患で休職した公立学校の教員は5009人。ここ10年ほど、高止まりの状態にある。2000年度は2262人だから倍増だ。文科省は原因が多忙にあると推測している。

キャリア約20年のベテラン中学校教諭・太田祐一さん(仮名)も、この10数年の多忙さを感じている1人だ。「生徒や保護者がずっと『多様』になり、接し方が複雑になりました。教材費や給食費の未納対応など、事務仕事も増えましたね」

太田さんによると、「地域に開かれた学校」という名目で、清掃活動やPTA活動など、地域行事への参加を求められることも多くなったという。当然ながら、いずれもボランティアだ。

なお、太田さんは音楽の教師で、吹奏楽部の顧問もしている。近隣の学校に比べれば熱心な方ではないというが、土日のどちらかは部活。学校行事や大会の直前は休みがなくなる。しかし、休日に指導しても手当は1日4000円、大会などの引率で5200円だ。これでも1年前より1000円ほどアップした。

文科省は「部活動」には対応も…

教員の労働環境の悪化は長らく問題視されてきた。文科省は2016年、改善に向けたタスクフォースを設け、対策についての報告書をまとめた。

今年3月には、タスクフォースの報告をもとに、省令を改正。2017年度から部活動の指導や大会への引率を行う「部活動指導員」を置けるようにした。地域のスポーツ指導者らを活用し、部活指導の負担を軽減する狙いだ。

しかし、そのほかの対策について、教員組合からは、具体性に欠けるとの指摘も出ている。「勤務時間管理の徹底の促進 」や「定期的な勤務実態調査の実施」など、啓発や調査に重点を置いた言葉が並んでいるからだ。

中でも日教組は、教員の労働時間について、民間企業同様、上限を設けるべきだとしている。そのためには、事実上、授業準備や部活動などでの残業をさせ放題にしている「給特法」を改める必要がある。「制度と実態がかけ離れすぎている。教員の命、日本の将来にかかわる問題。早急に手を打って欲しい」(藤川労働局長)

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