ライフネット出口氏「僕が会社を辞める理由」 日本一有名な保険会社の会長、ついに引退へ

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しかし、オンライン生保市場への参入が相次ぎ、2013~2014年度ごろからブレーキがかかり始めた。2015年度は前年度比4%台の伸びにとどまっている。2016年度は4月から12月までの9カ月間で、前年同期比5.5%ペースで伸びているが、往時の伸びと比べるべくもない。

出口氏は「マラソンでいえば、400メートルのトラックを走り終えて、まだ一般道に出たレベル。創業10年だが開業して8年。いちばん短い商品でも最短10年で、最初のサイクルを終えていない。売上高約100億円、一人当たりの売り上げが7000万円の小さなベンチャー企業であり、長い目でみていく必要がある」と訴える。

ライフネット生命は何を変えたのか

伸び悩みを打破する戦略の一つが、保険商品を売る販売チャネルの切り替えだ。

創業10年で痛感したのは、営業職員の「最後の一押し」なしに、生命保険商品を非対面チャネルで売る難しさ。近年はネットだけでなく、対面チャネルでの展開を始めている。

2015年4月にはKDDIと資本業務提携を締結しており、いずれau店舗を活用した販売体制を構築したいとしている。また、対面の乗り合い代理店である「ほけんの窓口」などとも組み、ネットとKDDI、対面代理店の3チャネルを軸に反転攻勢を模索している。

ライフネット生命の今後の課題は「大数の法則に基づく生保ビジネスは(規模が)大きくならないと安定しない。生保をもっと良くしたい、新しいことにチャレンジしたいという気持ちを生かし、発言力を大きくするには規模が小さいと話にならない」(出口氏)。一にも二にも、保有契約をいかに伸ばすかだ。

木庭康宏執行役員は厚生労働省出身、2010年に入社。法務などコーポレート部門が長く、6月から経営戦略担当の取締役となる(撮影:今井康一)

出口氏が創業直後の2008年に著した著書『生命保険はだれのものか』は、創業当時の問題意識や雰囲気をよく伝えている。出口氏はその中で、日本の生命保険業界の問題点を次のように指摘している。

「わが国の生命保険の問題点のほとんどは、生命保険業界が『一社専属の強力無比な主として女性セールスから成る販売網』を築き上げてきたこと、そしていつの間にか、その販売網を維持すること自体が、企業目的に転化してしまったこと、さらに、そのビジネスモデルを守り続けようとしたこと、に起因する」

次ページ10年間で変えられたこと、変えられなかったこと
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