知っておこう!「独学」で進むための思考法 自らを「主人公」にして勉強する真の価値

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受験や資格試験にとどまらず、仕事などにも広く役立つ「独学」の本質を説く柳川範之・東京大学大学院教授(撮影:梅谷秀司)
独学で大検を取得し、通信制で大学を卒業し、後に東京大学大学院教授となった人物がいる。『東大教授が教える独学勉強法』の著者・柳川範之氏だ。なかなか実行するのが難しいと思われがちな「独学」。自分1人と向き合う環境で、どうすれば効率的に勉強を進めていくことができるのか。柳川教授と私、鬼頭政人が独学について語り合った。

 

鬼頭柳川先生はご両親の転勤でブラジルに住んでいる中、独学で大検を取得し、大学も通信制を卒業しました。そもそもは生活環境から独学に取り組まざるをえなかったのがきっかけかもしれませんが、独学に積極的に取り組むことを勧めています。独学の具体的なメリットは、どこにあるのでしょうか。

柳川自分のペースで勉強ができることです。個々人はそれぞれ理解のペースが異なります。そのペースは遅いから能力がないとか、早いから能力があるという問題ではなく、それぞれの癖だったりパターンのようなものです。学校でも本当は一人ひとりのペースに合わせて教え、勉強するのが良いのでしょうが、なかなかそういうわけにはいきません。自分のペースで勉強できるのはまさに独学のメリットでしょう。

鬼頭独学というと、普通よりも「強い意志」が必要というイメージがあるのですが、どのような力がある人が独学に向いているのでしょうか?

独学は「癖」をつければ誰でもできる

柳川実は誰にでも「独学をする力」は備わっています。独学をするうえで重要なことは、「自分のペースをつかむこと」「自分のペースを自ら決めていくこと」の2つです。これを早くできる人ほど独学がやりやすい面はあると思います。この2つの"癖"さえつければ、誰でも独学はできる話なのです。

ただ、最初から自分で自分のペースがわかっていて、何でも自分で計画できる人はいないでしょう。癖をつけるにはしばらく時間が必要ですし、試行錯誤もあると思います。そこに対応するためにある程度の練習期間が取れれば、独学は誰でもできることだと思います。

鬼頭「自分のペース」ですね。今ふと思ったんですが、スポーツでも1つのアドバイスをしたときに、そのアドバイスを聞いてうまくいく人、違う角度から同じアドバイスを受けてうまくいく人、聞いてもしっくりこないけれど実際やったらうまくいく人などがいます。結果的にはみんな「うまくいく」点では同じなんですが、それぞれで上達の道筋が違いますよね。大事なのは、自分の「理解の癖」をつかむことなのでしょうか?

柳川そのとおりです。スポーツでも、個人に適した練習法方法はさまざまです。人によって筋肉の質が違ったり、今までやってきたスポーツ経験によっても異なったりと。スポーツの場合、コーチが個人に合った方法で指導をしてくれることも多いと思いますが、独学での勉強の場合はコーチがいないので自分で少しずつやっていくしかないですよね。理解の癖をつかむ以外にも、人に強制されずに勉強することに慣れる、ということも独学では必要です。

勉強は山の登り方にも似ています。山の頂点に行くルートは、1つだけでなく何通りもあって、その人に合った登り方が存在します。でも多くの人はほかの人と同じルートで同じ登り方をしていないとなんだか不安に感じてしまいます。しかし、そこであまり不安にならずに、自分なりの登り方をしてみる勇気が大事だと思います。

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