バルセロナが「観光客削減」に踏み切る事情 世界屈指の観光都市が抱える悩み

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バルセロナのランブラ通りには年間1億人もの人が訪れる(写真:Luciano Mortula/PIXTA)

バルセロナはスペインで観光客が最も多い都市なのをご存じだろうか。1992年にバルセロナオリンピックが開催されたのを機に、バルセロナ市が主導して観光都市として発展するために必要なインフラ整備などを行った結果、スペイン随一の観光都市となった。バルセロナが観光都市として発展するのに建築家アントニオ・ガウディの存在は重要な要素となった。たとえば、彼の未完の大作である「サグラダファミリア」だけでも年間320万人もの観光客が訪れている。

そのバルセロナが「観光客削減」に乗り出している。

3月中旬にはアダ・コラウ市長が、「2020年に向けた観光都市計画」を発表。今後は、観光客の宿泊を目的としたマンションの固定資産税を引き上げると同時に、こうしたマンションの新たな認可をやめる考えを明らかにした。また、ベッド・アンド・ブレックファスト(B&B)への規制も強化し、年間貸し出せる部屋を制限するという。バルセロナでは、2016年10月から1年間、歴史地区での新たな商業施設等の開設を禁止しているほか、2017年1月末には市議会で2019年以降新たなホテルの建設を禁止する法律が可決されている。

人口の20倍近い観光客が訪問

実際、バルセロナにはとてつもない数の観光客が訪れている。年間観光客数は約3200万人と、同市の人口(160万人)の約20倍にも上る。バルセロナで訪問者が必ず訪れるランブラ通りには1年間になんと延べ1億人が通行している。ある調査によると、そのうち21%が地元の住人で、残り79%は観光客。つまり、平日で、1日に20万人が通行しているというのだから、混雑を通り越している。

もう1つ、「異常事態」を示す数字がある。ポブレ・ノウ地区には、7万人が住んでいるのだが、この地区のホテルのベッド総数は2万にも上る。さらにグラシア地区では、観光客用に提供しているマンションが1万5000戸もあるという。

観光客の急増には、地元の住民も頭を悩ませている。市役所が市民約6000人を対象に「困っている問題」について尋ねたところ、「観光客の多さ」と答えた人の割合は約8%と、1位の「失業」(24.9%)に次いだ。一方、バルセロナを訪れる観光客の58%も「観光客が多すぎる」と考えているのだから、普通ではない状況だ。

観光客が増えていることで、実際市民にどんな弊害が起きているのだろうか。1つは、「騒音問題」だ。多くのマンションを持つ市民が「ホテルより安く泊まれる」と銘打って民泊を始めたところ、品行の悪い外国人観光客の存在が目立つようになった。「朝までどんちゃん騒ぎが続き眠れない」「エレベーターの濫用で頻繁に故障するため、維持費がバカにならない」など、マンション住民たちは頭を抱えている。

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