副業で思わぬ損を強いられた人から学ぶ教訓 社会保険や雇用保険のルールを知っておこう

拡大
縮小

Aさんが兼業を始めるとき、「500人以下の企業を選び」「保険者を選ぶとき、もう少し内容を精査しておけば」こんな事態にはならなかったはずです。この後、Aさんは改めてスーパーを運営する流通企業の社会保険に入り直したのですが、過去に支払った分はどうにもならなかったそうです。

雇用保険は1社で加入

一方、雇用保険は、社会保険のように双方の報酬を合算して保険料を計算するようなことはありません。

「生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける雇用関係」のある会社で被保険者になります。一般的には「給与を多くもらっている会社で加入する」ということです(必ずしも給与の多いほうで加入しなければいけないわけではありません)。したがって、失業給付などを受給するときは、その加入先の給与で給付額が決定されるということです。

つまり、2社同時に退職したとしても、受給できる失業給付の額は1社分のみになるというわけです。なお、1社のみ退職した場合であっても、その会社で雇用保険に加入していたのであれば、条件さえ満たせば失業給付は受給することができます。ただし、継続して勤務している会社からの給与額によっては、減額もしくは不支給となるので注意が必要です。ちなみに、残った1社の労働時間が、1週間20時間以上のケースは、その残った会社で雇用保険の被保険者となるため、失業給付を受給することはできません。

「副業を軽く見ている人がハマりかねない罠」(3月25日配信)でも触れたように、副業のメリットは十分にありますが、周辺の関係法令に照らし合わせて思わぬ不利益を被る可能性はあります。副業をやっている人、これから始めようと考えている人に私が社会保険労務士としてアドバイスをするとすれば、以下の4点になります。

(1)本業ありきの副業ならば労働災害(通勤も含め)リスクがなるべく低い職場を選択する。

休業補償をはじめ、平均賃金を用いる給付が低額になる可能性があるので、「時給が高い」なんて理由だけで選択してしまうと、Tさんのようなケースでは生活が苦しくなってしまいます。

次ページ残りの3つは?
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT