人気のシワ取り美容“ボトックス”に安全性問題 低価格の中国製に要注意

 しわ取り美容として日本でも人気のプチ整形「ボトックス」。ところが、この治療の安全性をめぐって問題が浮上している。

「死亡を含めた深刻な副作用の可能性がある」。今年1月末、米有力消費者団体が、米FDAに対して「ボトックス」や類似製品の副作用や安全性について調査を求める嘆願書を提出した。

ボトックスとは、食中毒の原因ともなるボツリヌス菌が作り出すA型ボツリヌス毒素(天然のタンパク質)を有効成分とする薬で、米国アラガン社が開発・販売。ごく少量を緊張している筋肉に直接注射すると、その筋肉が緩んで緊張やけいれんが収まるとされ、米国では1989年に医薬品として承認された。

日本でも97年以降、まぶたや顔面のけいれんなどの医薬品として承認を受け、日本ではグラクソ・スミスクライン(GSK)が販売。年間約4万人が医療機関で治療を受けている。

ボツリヌス毒素は実は「1立方メートルで都民を全滅できる」(ボトックスに詳しいGSKの本田明彦氏)ほど強い威力を持つ“劇薬”だ。「正しく使えば副作用はまれな非常に安全性の高い薬」(同)だが、管理や取り扱い等で厳格な規定がある。医師はGSKが開く講座を受けて資格を得る必要があるうえ、使用する際もその都度患者を登録してGSKから取り寄せることが義務づけられている。

一方、眉間のしわ取りなど美容分野への応用も日本で十数年前から始まっており、現在では「推定年間延べ30万人が治療を受けている」(日本美容医療協会理事の大森喜太郎氏)ほど“一般的”な治療だ。最近では、えらの縮小や多汗症の治療にも使われている。

ところが、厚労省はこうした分野への適応承認をしていない。にもかかわらず、実はこうした「適応外」の利用については、医師が薬事法に基づいて個人輸入・使用することが可能。入手方法や取り扱い、管理や保存についても規定はまるでなく、「見事なダブルスタンダードになっている」(業界関係者)状態なのだ。

こうした中、利用が急増しているのがフランス製や韓国製などほかのボツリヌス毒素製剤だ。最近ではボトックスのシェアは5割程度まで落ち込んでいる。

類似品がシェアを伸ばしている最大の理由は価格だ。ボトックスの価格が約3万~4万円するのに対して、韓国製は半額程度、中国製だと最大4分の1程度とぐっと安くなる。競争激化を背景に、「ボトックス」と銘打ってライバルより安価な薬を使っている例もあるようだ。

仏製や韓国製は自国で承認を受けており安全性は比較的高いとされるが、問題は中国製。同じ大きさの容器でも内容量や作用に違いがあったり、アレルギー反応のある豚由来のコラーゲンが使用されているものもある。米国では偽造品利用による被害も出ている。

さらに最近では「ロシアやイランからボトックスの偽造品を売りにくることもある」と美容横浜みなとクリニックの福岡大太朗医師は話す。同クリニックでは「効果が違う」(同)としてアラガン社製のみ利用している。

だが、最近ネットでも購入可能なだけにすべてのクリニックが安全な代理店を利用して仕入れているかは微妙だ。

クリニックが「ボトックス」と言いながら、偽物や他社製を使っている可能性もあるだけに、現在の治療は「勇気のある医者が、勇気のある患者さんに利用して、安全という症例を増やしているような状態」と大森理事は言い切る。

もっとも、ボトックスは偏頭痛等にも効くとされ、今後さらに利用が広がっていく可能性がある。それだけに、「一刻も早く厚労省は適応拡大をし、安全なものを、適切な管理の下、使えるようにするべき」と大森理事は警笛を鳴らす。

(週刊東洋経済)

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