ヴェゼルがC-HRにさほど負けていない理由 室内の広さと買い得感が先駆者の武器だ

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ヴェゼルの安さには理由が2つある。ひとつはコンパクトカーのフィットをベースとしていること。もうひとつはガソリン車がエントリー、ハイブリッド車がアッパーグレードという明確なすみ分けがなされていることだ。

すみ分けをしているのはヴェゼルだけではない

外寸から想像するより室内や荷室が広い

こういうすみ分けを実践しているのはヴェゼルだけではない。ベースとなったフィットはもちろん、トヨタでもコンパクトカーの「ヴィッツ」や高級SUVの「ハリアー」などはガソリン車とハイブリッド車で価格帯が異なっている。

いずれもガソリン車はコスト面で有利である自然吸気エンジンであり、当然ながらハイブリッド車はこれより高価になる。なのでこうした価格差がつくのはむしろ妥当と見るべきだろう。

この点についてはむしろC-HRが異例といえる。C-HRのガソリン車は欧州車で多用されるダウンサイジングターボ、つまり1200ccという小排気量エンジンにターボを追加することで好燃費を狙ったテクノロジーだが、自然吸気よりコストはかさむ。しかもトヨタは、日本で販売するSUVに4WDは不可欠と考えており、ハイブリッド車は前輪駆動のみであることから、ガソリン車は4WDだけとした。これもコストアップにつながっている。

それでもC-HRがここまで販売台数を伸ばしていることには少し驚いている。日本の自動車マーケットが、良いクルマであれば相応の価格であっても売れるという状況に移行しつつあるなら喜ばしいことである。

ただ、現状の数字は新車効果という見方もできるだろう。一巡すれば、ヴェゼルとの差が縮まってきたり、逆転したりする可能性もある。トヨタはC-HRに欧州市場で主力の1200ccターボエンジン搭載車のFFモデルや同マニュアルトランスミッション車の設定などを検討しているという話もあり、こうした商品の魅力を増していく施策が欠かせない。

C-HRがスタートダッシュを生かしてSUV年間1位の座をヴェゼルから奪うのか。それともヴェゼルが巻き返すのか。「SUV頂上決戦」が本格化するのはむしろこれからだ。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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