仕事人間の価値観がときに労災を引き起こす

福井弁護士会会長の海道宏実さんに聞く

福井弁護士会会長の海道宏実さん

福井弁護士会会長の海道宏実さんに、増えるパワハラや長時間労働について聞いた。

パワハラ、セクハラ、労災などの相談件数が、近年増えている。1人の労働密度が高く、周りの人間にも助ける余裕がなくなっている。「仕事人間」という高度経済成長期の価値観を押し付けても、人材は集まらない。企業の存続に関わる問題であることを訴えていきたい。

福井労働弁護団として、毎週水曜の夜に電話相談を受け付けている。2011年までは「解雇・雇い止め」が一番多かったが、現在は「いじめ・嫌がらせ」が最も多い。労災も多く、ほとんどけがではなく精神疾患だ。

要因として1人の労働密度が高く、職場で気を抜く機会がないことがある。企業はコストを下げるために非正規雇用を進め、正規、非正規ともに負担が大きくなっている。上司を含め職場のみんなが多忙で、孤立する人が出ても、気付かないケースがある。

もう1つは、過労死もパワハラも社会に認知されてきたことがある。我慢するという時代が変わり、声を上げてもいいんだ、労災申請してもいいんだという意識の変化はあると思う。

過去の発想では人材は集まらない

労災認定される過労死ラインは月80時間超の残業とされているが、生活に負荷が掛かる夜勤などは考慮されていない。人間の個体差もあり、改善が必要だ。

そもそも企業が社員の労働時間を把握しているかどうか疑問だ。タイムカードがなく、自己申告制の企業はたくさんある。社員のタイムカードが一律午前9時から午後5時までとなっていた企業もあった。労働時間の把握を企業の絶対的義務にしないと意味がない。

働き方改革としては(退勤してから出勤するまでの間に一定時間の休息取得を義務付ける)インターバル制度の導入も有効だろう。

高度経済成長期を経験した人と若者の仕事に対する意識の違いが、パワハラの原因の1つとも言われている。過去の発想では人材は集まらないし、企業は生き残れないということをわれわれは言い続けていく。

残業代がなければ生活が成り立たないという実態もある。労働時間を減らすことと、基本給を上げるという話をセットで考えるべきだ。

長時間労働で疲弊した人は新聞を読む気力もなく、物事を深く考えなくなる。少しの情報だけで自分の意見を決める。それが世論になってしまう。欧州では家族で食事を取りながら会話をしたり、広場やカフェで自由に議論をしたりする。時間に余裕があるかどうかは、民主主義の成熟と深く関わっている可能性がある。

■海道宏実(かいどう・ひろみ)
2016年4月から福井弁護士会会長。14年に「福井過労死弁護団」としてシンポジウムを開いた。パナソニック森田工場に勤めていた2次下請け会社の契約社員が、今年1月31日付で過労死と労災認定された件では、遺族代理人を務めた。福井市在住、55歳。

 

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