原油相場の「下限」はいったいいくらなのか 「米国シェールオイル増産で低迷」は本当か

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内訳をみると、サウジが979万バレルと、1000万バレルの大台を2カ月連続で下回った。同国が認められている生産上限は1005万8000バレルであり、これを下回っていることは、ある意味でサプライズである。またイラクは同6万バレル減の441万バレルで、生産枠の435万バレルを超過、アラブ首長国連邦(UAE)も4万バレル減の293万バレルだったが、生産枠の287万バレルを超過した。

一方、減産を免除されたイランは4万バレル増の381万バレルだったが、生産枠上限の380万バレルをわずかに上回った。一部の国は依然として生産枠を上回っており、結果的に、サウジが生産量全体を抑制するために、減産合意の多くを引き受けている。この点は将来に禍根を残す可能性があり、早い段階でイラクやUAEなどが合意に従って減産を履行することが求められるだろう。

供給だけでなく、需要増にも目を向けよ

一方、供給量が順調に減少していることから、今後はむしろ需要サイドに目を向けるべきであろう。国際エネルギー機関(IEA)は1月の月報で、2016年の世界石油需要の伸びは前年比日量約160万バレルだったとする一方、2017年は日量約140万バレルと、2016年からは減少するものの、高水準を維持するとしている。

またIEAは、OPECの減産は過去最大規模と評価し、この減産水準が維持された場合、需要の伸びに伴い、今後6カ月で在庫を日量60万バレル削減することが可能との見方を示している。

OECD加盟国の在庫は2016年第4四半期に日量80万バレル減少し、3年ぶりの減少幅となっている。 昨年12月末時点での在庫は、中国の在庫と海上貯蔵分は増加したものの、2015年12月以降で初めて30億バレルを下回った。OPECの減産が合意通りに履行され続け、世界の石油需要が想定通りの水準で推移すれば、先進国の石油在庫は2割ほど減少することになる。これはきわめて大きなインパクトである。

しかし、原油相場の反応は鈍い。その背景には、為替相場がドル高基調で推移していることと、米国のシェールオイルの増産懸念がありそうだ。米国内の石油掘削リグ稼働数は高水準を維持している。しかし、過去最高水準である1609基の4割程度であり、市場はシェールオイルの増産を過大評価している可能性がある。米国が産油量を増やせば原油価格は回復せず、結果的に自らの収益を抑制するだけで、これは過去に経験済みだ。米国内の石油生産者が自らの首を絞めるような増産を積極的に行うとは考えにくい。

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