VR・ARの先にある「混合現実(MR)」とは何か? ビジネス利用で進化する仮想現実・拡張現実

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NYT VRが配信したコンテンツのひとつで、紛争地帯の難民の子供たちの生活を生々しく伝えるVRドキュメンタリー映像「The Displaced」は、世界的な広告賞であるカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルでグランプリを獲得した。

VRによるリアリティの高い情報伝達は、報道や教育、あるいは企業における研修などの分野で、情報の受け手の深い理解を促す手段として利用されていくだろう。

また、在庫を幅広くそろえておくことが難しい高額商品の販売に、VRやARが用いられる機会も増えている。

自動車メーカーのAudiはショールームに高品位のVR機器を設置し、来店客が、展示車以外の外装や内装を確認できる仕組み「Audi VR experience」を家電見本市「CES 2016」で公開した。ショールームを訪れた顧客は、VRヘッドセットを装着し、仮想空間の中でAudiのすべてのモデルの外観や内装を確認できるほか、即座に色を変更することも可能である。ドイツや英国、ロシアの店舗でのテストを経て、2017年2月には日本でもAudi VR experienceが公開され、VRによるショッピングを体験できるようになりつつある。

また不動産業界では、専用のVR機器を用いた“バーチャル内覧”による不動産販売支援がすでに行われている。そのメリットは、さまざまなシミュレーションができる点に集約される。家具やインテリアの配置変更、マンションの高層階と中・低層階の眺望の違い、朝・晩の日照状況の変化など、条件を変更した場合の状況を疑似体験できる。

ARがもたらすeコマースの新たな可能性

一方、利用者の視界に情報を重ねて現実を“拡張”するARは、eコマースに新しい可能性をもたらす。

アメリカの家具専門ECサイトである「Wayfare」は、Googleの環境認識型のAR技術“Tango Technology”を搭載したARデバイスを活用して、家具を実際の自分の部屋に置いたようにシミュレーションしたうえで購入できるアプリケーションを開発した。家具を配置したい部屋にARデバイスを向けると、部屋の幅や高さが計測され、実寸に合わせたサイズの家具の仮想モデルが表示される。しかも、その仮想の家具は測ったように部屋の床や壁にぴったりと配置される。

これにより、実際の希望の場所に家具が収まるかどうかを事前に確認できるため、買ってから「家具が入らなかった」という失敗がなくなる。

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