HIS、「変なホテル」100軒体制目指す大胆戦略 投資枠は最大2000億円、ホテル事業に本腰

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2月28日に発表した2016年11月~2017年1月期(第1四半期)決算の営業利益も25億円(前年同期比45.7%減)と振るわない。

こうした状況を受け、2016年10月には、それまで2008年から社長だった平林朗氏を副会長とし、澤田氏が12年ぶりに社長に復帰した。

平林氏はグループのホテル事業を統括するHISホテルホールディングス(略称はHHH)の社長とM&Aを専門に扱う部署のトップとなった。

ホテルを5年で100軒体制に

ソファベッドを使うことで最大4人まで泊まれる。家族連れの多い舞浜エリアのホテルはこうした作りの客室が多い(写真:HIS)

そして打ち出したのが、「変なホテル」などホテルを5年で100軒体制に拡大し、事業の柱にする計画だ。今回開業した東京ベイを含めてグループ全体で13軒あるホテルを、2021年までに100軒体制に増やす。

そのために、グループ全体のM&Aとこのホテル事業に対して、借入金を含め最大で2000億円の投資枠を設定。旅行のほか、周辺事業の強化とホテル事業の拡大を加速させ、「3~5年後に売上高1兆円、利益で500~1000億円の水準にする」(澤田氏)とブチ上げた。

2017年には、グループが運営するラグーナテンボス(愛知県蒲郡市)の中に「変なホテル3号店」を開業。さらにM&Aかフランチャイズで他社をグループ内に取り込み、年内にも30軒体制まで増やす計画だ。

ただ、通常、自社でホテルを開業するには土地の取得から建設まで2~3年はかかる。

もし、東横インのように不動産オーナーにホテルを建設してもらい、賃借するリース形式の場合はさらに時間がかかる。

変なホテルは確かにロボットを多く活用している。だが、一番活躍しているのはタブレット端末のように記者には見えた(記者撮影)

澤田氏は「ホテルの建設費が1軒で20億円。それが100軒だから2000億円」という試算を以前の決算会見で披露していた。実際に初号棟の建設費は18億円、東京ベイの場合は不動産取得費用も含めて34億円という巨額の費用がかかっている。

昨年秋に記者も初号棟に自腹で泊まってみた。ロボットを活用したとはいうものの、チェックインや部屋の空調・照明設定はタブレットで行い、荷物を運ぶポーターロボットも移動できるフロアが限られている。記者の主観ではあるが、HIS側が強調するほど、ロボットが活躍しているようには思えない。

変なホテルの宿泊料金は初号棟で2万円前後、東京ベイでも周辺のビジネスホテルよりやや高めの設定だ。当初は物珍しさや新鮮さが顧客を呼び込むだろうが、一巡した数年後にも、しっかりとした単価と稼働率を維持することができるのか。評価にはもう少し時間がかかるかもしれない。

HISはホテルの運営事業のほかにも、変なホテルの運営ノウハウをパッケージにすることでFCシステムを構築。全世界で1000軒ほど販売し、「既存にはないビジネスモデルを作り、ゲームチェンジャーになりたい」(ホテル事業を統括する平林氏)と意気込む。

ホテル運営は巨額の不動産投資が絡むため、単年度ではなく、10~20年という長期間での収支をはじく必要がある。はたして遅れて参入してきたHISの戦略は功を奏するのか。12年ぶりに社長に復帰した澤田氏の手腕が問われている。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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