「ゴルフ熱」復活のカギが大学生にある理由 大学には気軽にプレーできる「機会」がある

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3月、PGAの担当副会長が、首都大学東京で行われた「大学体育指導者養成研修会」に参加。大学でゴルフ授業を行う「先生」たちに、学生へのゴルフの指導方法を講義したところに取材に行った。PGAでは大体連側の要望もあって、学生用のテキストと、ゴルフを教える先生のための授業カリキュラム、その詳細を解説する指導マニュアルを作成し、研修会ではそれに沿って大学でのゴルフ授業の進め方を指導した。

この研修会では、バスケットボールや水泳などについても大学授業の指導者への講習が行われたが、そちらは指導者自身がその競技の経験者であることが多い。ゴルフの場合、どちらかというと、大学授業の指導者でもゴルフについては素人のことが多い。そのため、580大学でやっているといっても「どう教えたらいいか」「何を教えたらいいか」が統一されずにきているのが現状でもある。

面白い授業で、ゴルフの楽しさを知ってほしい

それならば「ティーチングプロが教えればいい」という意見もあるだろうが、大学の授業では教員免許の問題もあってできない。授業が面白くなかったり、ためにならなかったら、せっかくの新規ゴルファーが逃げてしまう可能性もある。PGAにとっては、というよりゴルフ界にとっては、大学でしっかりしたゴルフを教わって楽しさを感じてもらい、卒業してもゴルフを続けてほしい。

研修会では、倉本昌弘PGA会長の講演もあった。その中で近年、学生にとってゴルフは就職活動の大きなファクターになっていて、企業担当者もゴルフができるのはいいファクターとしているという話がでていた。PGAには就職活動をしている学生から「ゴルフはどこで習えるか?」という問い合わせもあるという。学生の側でも、ゴルフにビジネスツールとしての「価値」を見いだしてきているのかもしれない。

ゴルフは、バブル時代に「接待ゴルフ」の形でビジネスに利用されてきた。土・日曜日なら5万円も6万円もしたプレー料金を、接待する側が社費で賄えるぐらいの経済力があったから行われていたことなのだが、バブル崩壊とともにそんな機会が減った。

自費でのゴルフが主となったことで、あらためて価値が認められてもいる。「高い金を払ってゴルフをさせてあげる」「高い金を払わずにゴルフをさせてもらった」という、ある意味、自分の、相手の社費でゴルフをしたというだけの関係よりは、深い関係構築ができる可能性がある。

2月に米国のトランプ大統領と安倍晋三首相が「ゴルフ外交」を展開したが、その際にトランプ大統領は「昼食を共にするよりもゴルフをしたほうが人をよく知ることができる」と語った、という報道があった。

金銭的にはトランプ大統領の「接待」だったのだろうが、元々日本のような「接待ゴルフ」の概念のない米国人なので、ゴルフの本質を言い表していると思った。ゴルフのプレーにはその人の性格が出るといわれる。相手を理解するためにゴルフが役立つと考えられているのは、今も昔も変わらないのだと感じた。

さて、大学に進学されるみなさん。その大学の体育の授業にゴルフがあるかどうかはわからないが、もしあったら、受講してみてはいかがだろうか。

授業料は支払っているので、感覚としては無料で「レッスン」を受けられる。しかも、その授業を受け持つ先生がPGAの講義を受けていたら、良い授業になるだろうから、なおさら将来のためになる。就職活動の時になって、ゴルフのレッスンを受けて始める必要もない。他の競技の授業と違って、ほぼ全員が初心者なので、技術に差が出ることも少ないだろう。

大学での授業を受けられなかった新入社員のみなさんも、会社に入って先輩や取引先の人たちとの付き合いの中で、ゴルフが必要だと感じることがあるかもしれない。春はゴルフを始めるのにいい季節でもある。

赤坂 厚 スポーツライター

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あかさか あつし / Atsushi Akasaka

1982年日刊スポーツ新聞社に入社し、同年からゴルフを担当。AON全盛期、岡本綾子のアメリカ女子ツアーなどを取材。カルガリー冬季五輪、プロ野球巨人、バルセロナ五輪、大相撲などを担当後、社会部でオウム事件などを取材。文化社会部、スポーツ部、東北支社でデスク、2012年に同新聞社を退社。著書に『ゴルフが消える日 至高のスポーツは「贅沢」「接待」から脱却できるか』(中央公論新社)。

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