米国株の「バブル」はどこまで続くのか 2017年では終わらず、長期化する可能性

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このように考えると、単純に「割高だから買えない」というのも安易だ。景気経済の拡大、企業収益の拡大は今後のトランプ政権の政策運営次第の面もあるが、景気拡大を第一に考えるトランプ政権が景気を悪化させるような政策を取るとは考えにくい。むしろ、景気を過熱させるような、あるいは企業業績を拡大させるような政策を実行するだろう。そうなれば、当面、米国株の「高値維持」はますます正当化されることになる。

「ハイテクバブルと同期間」なら2019年まで景気拡大

米国の過去の景気拡大局面から終焉までの一連の流れを振り返ると、1980年代の商業用不動産バブル、1990年代のハイテクバブル、そして2000年代の不動産バブルがある。それぞれのバブルが崩壊したことで、景気拡大局面は終了したが、これらの景気拡大局面の平均期間は95カ月である。もっとも長期間だったのがハイテクバブル時の120カ月である。今回の景気拡大局面は3月で93カ月になるが、ハイテクバブル時と同様の期間にまで景気が拡大すれば、2019年半ばまでの拡大局面の継続が想定される。

これは、米国株式市場のサイクルにも、ほぼ合致する。GDPが拡大し、金利が上昇する局面では株価の上昇が続くことになる。この期間はおおむね9年程度ともいわれ、今回の株価上昇が2013年に始まったとすれば、最長で2021年程度まで株価上昇が続く可能性がある。

一方、過去の米国株の上昇は、長期間でとって見ると1サイクルとしては17年程度続いていることから、2013年から2030年まで株価の超長期的な上昇が続く可能性さえある。過去のダウ平均株価の年率の平均上昇率は8.75%だが、単純計算では2030年には6万4000ドル前後まで上昇することになる。つまり、現在の3倍を超える株価水準だ。こうした机上の計算は「希望的観測でしかない」との指摘もあるものの、過去の事実が雄弁に物語っている部分もあり、それをどのように認識するかの差であろう。

今後、インフレ率が上昇し、金利が上昇することで株価は抑えられるとの指摘もある。しかし、FRBがたとえば年内にあと3回利上げしたところで、米国10年債利回りは、なお3%台にとどまる。ITバブル時には6%台、サブプライムローン問題時には5%台だったことと比較すると、なお低い。

また、これらの株価ピーク時には、2年債と10年債の金利スプレッドがプラスになる「逆イールド化」が見られたが、現時点のスプレッドは1.2%のマイナスであり、依然として金利上昇が市場を圧迫するような状況には程遠い。このように考えると、FRBの金利正常化はまだ始まったばかりであり、市場を圧迫するような状況になるのはまだ先であろう。

現時点で、利上げによって景気や株価水準をわざわざ押し下げるようなことをする意味はなく、結果的に長期的な米国株の上昇が続く可能性もある。現在は歴史的な上昇局面の第2段階に入った可能性が高い。このような視点で考えれば、米国株に対する見方もまた違ってくる。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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