「車優先」からいち早く転換した米大都市の今 交通を運賃収入に頼らない「公共サービス」に

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ポートランド国際空港に到着した筆者はまず、MAXライトレールと呼ばれるLRTのレッドラインに乗った。米国には他にもダラス、ミネアポリス、シアトルなどLRTが国際空港に乗り入れる例がある。

車両は日本のLRTより大柄で、全長約27メートル、一部低床の連接車を2つつなげた4両編成だが、それが理由でMAXと名付けられているわけではなく、Metropolitan Area Expressの略である。

MAXライトレールは自転車の持ち込みが可能だ(筆者撮影)

ホームは到着ターミナルの端にあり、手前に券売機がある。料金は均一で、2.5時間有効と1日有効がある。乗車券はホームに設置されたバリデーターと呼ばれる機械に通して有効にして乗車する。よって車内での料金授受はない。信用乗車と呼ばれる方式である。

車内で目に付いたのは、ドアの脇にあるユニバーサルスペースだ。自転車やベビーカーのほかスーツケースのアイコンが描かれており、空港アクセス鉄道らしい。ちなみに自転車は前輪を上にして吊るして固定する。スペース節約になるし、人間は座っていられる。賢い方法だ。

上下線が別々の道路を通るワケ

MAXライトレールは、しばらくは日本の通勤電車並みのスピードで疾走する。駅間も2分前後とLRTとして考えれば長い。ところがダウンタウン(都心)に近づくと急に速度を落とし、ダウンタウンでは道路上を走る。そして中心部を抜けると再び専用軌道になり、速度は上がり、駅間は長くなる。欧州のトラムトレイン、我が国の広島電鉄宮島線に近い。

もうひとつ、ダウンタウンでは上り線と下り線が別々の道路を走っていることも特徴だ。道路幅が狭いためもあるが、それだけが理由ではない。

ポートランドのダウンタウンは、碁盤の目のように道路が整然と走っているが、その間隔は米国の都市としては狭く、道路で囲まれた1ブロックが小さい。これを生かし、ダウンタウンのにぎわいを取り戻そうと考え、通り沿いのビルは1階を商店のための空間とし、LRTの上下線を違う道路に走らせることで、多くの通りが賑わうようにと考えたのだ。

欧州の多くの都市と同じように、ポートランドのLRTは走らせること自体が目的ではなく、まちづくりのための手段のひとつなのである。

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