金融市場の謎、「ボラティリティ停滞」の理由 トランプ政権の政治的ノイズに無関心

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世界的な借り入れの規模は、金融危機前から大きく減少している。JPモルガンがまとめた過去5年間の民間セクターの年間の信用伸び率は6─8%程度で、08年までの5年は13%前後だった。

各国政府や銀行が金融危機以降、過剰な与信や借り入れに慎重となったおかげで、低ボラティリティと資産価格上昇という「ゴルディロックス(理想的な両立)」環境が続きそうだ。

市場のボラティリティ指標は過去最低圏で推移。米国株投資家の不安心理の度合いを示すボラティリティ・インデックス(VIX)は足元が約12%と、これを下回った場面は過去26年でほとんど見られない。ユーロ圏の株価指数のボラティリティ指標も15%前後で歴史的な低さとなっている。

「政治が成長を弱めるならボラティリティは上昇する」

トランプ氏の移民、通商などに関する政策が市場にマイナスの影響を及ぼす可能性を伝えるメディアの騒ぎは鎮まっていないが、今のところそれが実現したわけではない。

ドイツ銀行のヘオルヘ・サラベロス、ロヒーニ・グローバー両氏は14日付ノートで「政治が成長を弱めるなら、ボラティリティは上昇する。しかし強いデータと政策を巡る不透明感という異例の組み合わせが続く限り、ボラティリティは落ち着きを維持しそうだ」と予想した。

シティの株式アナリストチームによる調査では、世界の株式市場のボラティリティは過去10年の中央値より低く、特にフランスと英国、米国は中央値を50%強も下回っている。

同チームは、株価上昇局面でボラティリティは低下、株価下落なら上昇する傾向があると分析した。米国株は09年3月の底値から250%強上昇し、ここ数週間で何度も最高値を更新した。

さらに同チームによると、世界の企業利益の振れ幅が縮小し、過去5年間は常に5%ないしそれ未満となっていることも、市場のボラティリティ抑制に貢献しているという。

(Jamie McGeever記者)

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