生活保護63歳独身男性を苦しめる腰痛と貧困

定職には付けず週末の日雇いで糊口を凌ぐ

タイゾウさん(63歳、仮名)は、新しく出会った人に記念撮影を頼む。もう100枚以上になるだろうか。ひとりのときに眺めては孤独をやり過ごすのだという(筆者撮影)
現代の日本は、非正規雇用の拡大により、所得格差が急速に広がっている。そこにあるのは、いったん貧困のワナに陥ると抜け出すことが困難な「貧困強制社会」である。本連載では「ボクらの貧困」、つまり男性の貧困の個別ケースにフォーカスしてリポートしていく。
※筆者留学の事情により一時中断していた本連載ですが、今回から再開します。

 

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乾燥機の中を紺色のジャージや下着がぐるぐると回っている。週に1度利用する自宅近くのコインランドリー。埼玉県内で生活保護を受けながら、独り暮らしをするタイゾウさん(63歳、仮名)は、単調な動きを眺めながらよくこんな物思いにふける。

「女房がいれば、洗濯はきっとやってくれたんじゃないか。そうしたら、私は(彼女の)そばで好きな本でも読みながら過ごしていたかもしれない。結婚、しとけばよかったなぁ……」

たそがれ時、わずかな洗濯物を抱え、痛めた腰をかばいながら猫背ぎみに歩いていく後姿は、頭髪の白さもあって実際の年齢よりもずっと年上に見えた。

高校卒業後、大学受験に向けた予備校に通うため、故郷の秋田から上京。日本はちょうど高度経済成長期の終わりに差し掛かりつつあった。結局、希望する大学には受からず、そのまま東京で働き始めた。飲食店や健康器具販売、警備会社、運送会社――。20代のころのアルバイトから最近の日雇い労働まで含めると、これまでに20近い仕事に就いてきた。

営業ノルマをこなせずに解雇されたこともあれば、人間関係に嫌気が差して正社員の仕事を自ら辞めたこともある。そうかと思うと、アルバイトとして入った会社の上司から「正社員にならないか」と誘われたことも何度かあるが、いずれも断った。

バブル景気で仕事はいくらでもあった

30代のころはバブル景気真っただ中。往時を「今とは違って探せば、すぐにまともな仕事が見つかる時代でした」と振り返り、正社員になる機会を逃したことについて「働くというのは、大きな建物のきれいなオフィスに出勤するものだという、根拠のない思い込みがあったんです」と後悔をにじませる。

「いくらでも仕事があった」時代の潮目が変わったと実感したのは、2000年ごろ。長年、倉庫整理のアルバイトをしていた会社をリストラされたのだ。気がつけば年齢は40代半ばを超えていた。以降は望んでも正規雇用の仕事は見つからず、さまざまなパートやアルバイトの掛け持ちに加え、複数の派遣会社に登録して日雇い労働をこなした。

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