いざ統合へ! ビクター・ケンウッド両トップに直撃−−河原春郎・ケンウッド会長

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--今後、テレビの展望が難しければ、またもう一度判断を下し直すということもあるんですか。

難しさにもよりますけれどもね。これが会社の帰趨を制するような問題になれば、当然見直さなければいけないでしょう。

--10月からの新体制で、塩畑(一男ケンウッド社長)さんは留任する一方、佐藤さんは持ち株会社の社長に就任します。河原さんが最高経営責任者という位置づけではありますが、わざわざ“たすき掛け人事”にするのは、ビクターへの遠慮の表れではないのですか。

これは、ものすごく前向きな意思表示です。本来なら佐藤さんがビクター社長に残っていいわけですが、新しい50代早々の人に交代したわけでしょう。新生ビクターという、新しい成長への思いが入っているわけです。佐藤さんや僕らが古い、いろんな問題を始末して、次の新しい時代への枠組みをつくっていく。そこを役割分担しようということです。

--では、河原さんと佐藤さんの具体的な役割の違いは?

佐藤さんは営業が長く、事業にも携わってこられたから、現場をよくわかっている。だから、今持っている経営資源で両社のシナジーを発揮する、新しい事業を生み出す、といったところに力を発揮していただけると思います。

私は会社全体、事業の構造を近代的な会社に変えていく。一つは連結経営です。ビクターは筋道立った戦略と売り方、値段、コストを一つの連結体として全責任を持って経営する考え方が本格的にできていない。

もう一つは財務の問題。全体のキャッシュの動きを効率化したり、借金をするにしても、事業への再投資はもちろん、新しいポートフォリオを加えていく、あるいは構造を変えていくための投資に回していかないといけない。こういうところは私がきちっとやる。

--河原さんの使命は、時代に合わせた成長への足場を固めていくということですね。

そうです。たとえばパリの街を歩くと、外見は何百年前と変わらないのに中へ入ると最新設備が入って、ものすごく近代的になっている。

日本の会社もその時代、時代に合ったように変わっていかないと、絶対に続いていかないんですね。創業の頃はベストの会社の構造でも、50年経つと、世の中が変わって、経済構造も変わるから、ダメになる会社がいっぱいあるわけです。その意味で、存立の基盤を構造改革していくことが重要だと思います。

ビクターとケンウッドのような老舗の会社が寄り合って、新しい会社に生まれ変われるというモデルができると、「ああ、そうか」とみんなに思ってもらえると思いますよ。

(聞き手:中島順一郎 杉本りうこ 撮影:今井康一 =週刊東洋経済)

かわはら・はるお
1939年生まれ。61年、東芝入社。主に重電、経営企画畑を歩み、97年常務就任。2000年に同社顧問、米投資ファンドのリップルウッド・ホールディングスのシニアアドバイザーを経て、02年、ケンウッド社長に就任。07年会長。

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