シャープ戴社長「鴻海流コストカット」の全容 堺工場のエスカレーターは運転を停止

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社長就任の初年度で営業益の黒字化に道筋をつけた戴正呉社長(記者撮影)

「ここの工場、エスカレーターがあるんですよ。工場でエスカレーターを使うなんてサウジアラビアの国王ですか?私たちシャープですよ」――。

3月13日に大阪の堺工場内にある本社で開いたシャープの経営改革の進捗報告会見で、戴正呉社長は饒舌だった。それもそのはず、シャープは前2016年3月期に営業益1619億円の赤字に沈んだが、戴氏が2016年8月に社長に就任し、2017年3月期は一転して474億円の黒字が見込めるところまでこぎつけたのだ。存亡の危機に立たされていたシャープを、戴社長はどうやって立て直したのか。

中国出張の宿泊は鴻海の施設を利用

第一は、徹底したコストカットだ。就任前、戴社長はシャープについて「金持ちの息子のような社風」と評し、コスト意識の低さを問題視。社長就任後は無駄の削減に乗り出した。賃貸料圧縮のため堺に本社を移転、東京支社を縮小し、LED等を製造する三原工場はセンサー類を製造する福山工場への集約を決めた。中国出張の際の宿泊には鴻海の施設を使用させるなど、改革は徹底している。会見で無駄の象徴としてやり玉にあげられた工場のエスカレーターは、すでに運転を停止した。

第二は、投資判断の際のチェック体制の強化だ。300万円以上の投資に関しては戴社長の承認を必要とする体制に変更、就任から今までに決済した案件は2000件にのぼる。「就任当初、投資を承認できる案件は2割以下だったが、今では7~8割まで上がってきた。『この投資は必要か?』と考える視点が根付いてきている」(戴社長)という。

一方で、有機EL関連の設備投資や創業の地である旧本社の近隣ビルの買い戻しなどには資金を充当。さらに北米に液晶の新工場を建設する計画も検討するなど、メリハリを利かせた投資方針を採っている。2017年度からは社員のボーナスも業績貢献に応じて、年間1カ月から8カ月まで幅を持たせたうえで支給、「信賞必罰」のモットーをより鮮明に打ち出すという。

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