「奇才」が嗅ぎ取った「変人」首相の異変のにおい

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「奇才」が嗅ぎ取った「変人」首相の異変のにおい

塩田潮

 洞爺湖サミットが終わった。開催前は福田政権花道論も流れたが、福田首相に投げ出しの気配はない。今後は内閣改造と解散・総選挙が注目点だが、首相は改造には「白紙」、解散も「考えていない」と繰り返すだけだ。

 ところが、小泉元首相が7月3日、講演で「『追い込まれ解散』にならないために来年9月の衆議院議員の任期満了の半年前までに有利な時期を選ぶべき」「首相は自前の内閣でないのも気にしている。改造に踏み切れば、解散は自分の手でやるだろう」という趣旨の話をしたらしい。そこで気になるのが福田首相と小泉氏の「本当の仲」だ。疎遠説や不和説が流れたこともあった。小泉氏は講演で、首相に対して「判断、決断を」と訴えかけ、「どんな決断でも支持する」と言い添えた。長く同じ釜の飯を食ってきた二人だから、絆は想像以上に堅いという解説も多い。一方、決断しないなら優柔不断の首相を見限るぞというサインではないかと見る人もいる。

 小泉氏は「変人」と呼ばれる。だが、二人の周辺では昔から「小泉氏は『奇才の人』という意味も含めて、変人を通り越して『奇人』。『変人』は福田首相」という評が一般的だという。小泉氏とは別の意味で、永田町の論理や人間関係に無頓着というのが「福田変人説」の理由だ。

 迷走、総崩れ、死に体などと言われても割りと平気で、落ち込んだりしない図太さがあるようだ。その代わり、短気で怒りっぽく、粘りに欠け、権力にも淡泊な面があるから、嫌気が指したらさっさと辞める可能性ありと周囲は心配する。
 もしかすると、「奇才の人」はいま、「新・変人首相」のわずかな表情の変化から異変のにおいを嗅ぎ取り、警告を発したのかもしれない。一寸先はともかく、9月以降の政治は「闇」といっていい。
塩田潮(しおた・うしお)
ノンフィクション作家・評論家。
1946(昭和21)年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
処女作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師-代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤の真実』『日本国憲法をつくった男-宰相幣原喜重郎』『「昭和の怪物」岸信介の真実』『金融崩壊-昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『出処進退の研究-政治家の本質は退き際に表れる』『安倍晋三の力量』『昭和30年代-「奇跡」と呼ばれた時代の開拓者たち』『危機の政権』など多数
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