鴻海・郭会長が「サムスン潰し」に乗り出した 中国に巨大パネル工場作り、世界制覇へ一手

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郭会長が描く夢は非常に遠大だ。2800億台湾ドル(約1兆円)の中国投資を始めたのに続いて、さらにペンシルベニア州での2200億台湾ドル(約8100億円)と言われる投資が待っている。併せて5000億台湾ドルだ。

うち2800億台湾ドルは、他のパートナーと共同で出資するとはいえ、台湾の液晶パネルメーカーの群創と友達光電(AU Optronics)は近年、ようやく赤字を脱したばかりで、株価が依然として低迷している。巨大投資で利益が出るのか。これが恐らく鴻海の60万人の株主、そしてシャープの株主にとって、最大の関心事だろう。シャープへの資本参加、広州市での第10.5世代パネル工場、将来のペンシルベニア州でのパネル工場開設と、資金面のプレッシャーは非常に大きい。

2016年2月に郭会長は自分が持っている株式1億7000万株を抵当に入れている。今年1月にはさらに4億3000万株を抵当に入れた。こうした数回の抵当権設定で、時価の6割で計算した場合でも、300億台湾ドル(約1100億円)に相当する。現在までのところ、郭会長が抵当に入れた株式は10億9980万株で、持ち株の51.69%に達している。もし利益が少なく、負債が多ければ、株主として心配するのは当然だろう。

世界一を求めて、領土を広げてきた

そして郭会長はこう語っている。「中国には13億人いる。米国にも3億人の市場がある」「私が求めるのは世界のハイテク産業であり、国家の選択ではない。どの場所にも、市場があり、需要がある」「中国、米国。私はどちらも必要だ」と。

世界一を求め、市場の拡大を求め、技術の深化を求めている郭会長。サムスンが経営危機とパネル不足に陥る中、郭会長は夢の実現のためのスピードをさらに上げている。パネルで世界トップに立ち、シャープのブランドに栄光を取り戻すために設定したデッドラインは、2020年である。

台湾から出発して43年間。郭会長が率いる鴻海の大軍は、中国、日本、米国へと領土を広げてきた。今、広州市増城の黄色い大地に立つ彼の対戦相手は、サムスンだ。彼はパネルによって決戦を挑み、世界に覇を唱えることを目指している。

許秀恵、林宏文、鍾張涵、黄煒軒 台湾「今周刊」記者

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